序章(改3.4)<白い海>
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?」
次の瞬間、上空から行く筋もの光軸が彼女たちをかすめ、大きな水柱が上がる。
「!」
そのとき誰かの声にならない叫びが響き、部隊全体に動揺が走った。
「隊長!」
旗艦の艦娘が徐々に白い海へ沈んでいくのが見えた。
(狙われた!)
周りの駆逐艦は異変に気付き慌てた。
「誰か! 早くっ」
数名の駆逐艦が救援のため近づこうとするが敵の猛攻は激しさを増し近寄ることも出来ない。
状況を把握した敵も互いに合図をして残された艦娘たちに近づく。そして弄ぶかのごとく直撃弾を意図的に逸らして部隊を分断させ始めた。
弾幕の向こう側に分断された旗艦は留まることなく白い波間に沈み行く。
一瞬の晴れ間。風と吹雪が弱まる。
残された艦娘たちは波間に傷付いた隊長の姿を見た。その艤装からは火花が散り額から赤い筋が滴り落ちる。
誰かが叫ぶ。
『隊長!』
(深手を負ったな……これが轟沈か)
もはや自分も、どうすることも出来ない。体の各部が機能を停止し回路が分断されていく。
だが彼女の瞳には苦悶ではなく受容する安堵の表情が見えた。
(これで終わる)
それは痛みや悔しさよりも不思議な気持だ。
『隊長ぉ!』
部下たちの声が遠ざかる。
だが突然、彼女は我に返ったように大きく腕を空へ伸ばした。完全に水没する直前だった。
「……!」
他の艦娘の名前か、誰かの名前を叫んだようだった。
そして急に哀しい表情を見せた。
見守るしかない艦娘たちには隊長の情念のような……何か抑えられていたものが外れたようにも感じた。
しかし直ぐに大きな波が覆い被さり彼女の姿は消え去った。あっけない最期。そして灰色の天海が吹雪の中で空しく広がる。
残された駆逐艦たちは吹雪の向こうに幾つもの黒い群れを見た。それは彼女たちが初めて間近に相対する敵の本体。
しかし旗艦を失った艦隊に反撃する気力は失せていた。敵の高速艦は遠巻きにしながら徐々に退路を塞いでいく。
手出し出来ない少女たちは、ただ青ざめ互いに手を取り合ってジッとしているだけだ。
もう救われる道はないのか?
なにも、
ワカらナイ……
冷たい白い海の中で旗艦の艦娘は手を伸ばしていた。
ナニモ、
ワカラナイ……
同じ単語を呟くように繰り返す。
海中なのに妙な響きと残響がある。
だが暗い水の中。白雪の如く揺れる水泡は何も答えてくれない。
海上では不気味な灯りを点滅させる群れが居た。
彼らは白い海に浮かぶ残された艦娘に徐々に近づく。
恐怖に震える少女たち。もう、正視出来ない。
そこで場面は暗転。
薄暗くなった日本海に少女たちの叫び声が響き渡る。
同時に金属が引きちぎられ
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