序章(改3.4)<白い海>
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ちが一斉に半身を翻して魚雷を発射する。無照準の直接攻撃だ。
やや距離を置いて前方の艦娘たちも続けて一斉に魚雷を放つ。
旗艦の彼女は、その方法で佐世保沖で敵を沈めた経験があった。いざという時の為に、それを教え込んでいた。
だが残念ながら敵への影響は無かったようだ。
「甘くはないか」
舞鶴の海。この海域の敵は手練れだ。彼女はそれを痛感した。
そして攻撃したことで、こちらの位置を相手に知らせてしまった。すぐ敵の反撃を受け始める。
「回避、回避!」
再び行動する艦娘たち。叫び声と同時に彼女たちの周りには、いくつもの水柱が立つ。
艦娘たちは諦めない。必死で反撃を試みる。
だが明らかに実戦経験が乏しい。さらに、この大荒れの海上では攻撃どころではない。自らの体勢維持だけでも精一杯だ。
(厳しい)
指揮する彼女は、つい心中で弱音を吐く。
(条件が悪過ぎる)
不慣れな者に、この荒天は衝突や同士討ちの危険すらあった。一部の駆逐艦娘は不安そうに耳を澄ませ次の指示を待っている。
そのとき彼女たちの北方に黒い船団……敵本体が見えた。
(深海棲艦)
誰かが呟く。
彼らは、この荒天でも臆することなく次々と攻撃を繰り出している。その安定した攻撃振りは冬の海での実戦経験の多さを感じさせた。
(くっ)
旗艦の艦娘は焦った。
部下の艦娘たちには悪条件が重なっている。経験不足に加え装備も不十分だ。
その焦りが伝わったのか一人の駆逐艦が叫んだ。
「隊長!」
ハッとしたように旗艦の少女は笑顔を作った。
「まだ大丈夫!」
凍てつく吹雪の中で彼女は反省した。
(弱気になっちゃダメだ)
次の瞬間、敵の魚雷が二人の間近で爆発した。艦娘たちが叫ぶ。巨大な水柱で再び隊列が乱れていく。
少女は叫んだ。
「皆、無事?」
「大丈夫ですっ!」
だが部下の反応は弱々しかった。
(歯がゆい)
こんなに悔しいのは初めてだった。
そもそも、あの作戦参謀の下だから余計に焦るのだろうか?
(いや、そんなことはない)
なぜか必死で否定する自分。だめだ今は戦闘中だ。集中せよ!
そのとき無線担当の駆逐艦が叫んだ。
「司令部より入電……撤退です!」
「遅い」
旗艦は複雑な表情を見せたが躊躇している暇はない。大きく頷いた彼女は離脱を指示。駆逐艦たちは慎重に反転を試みる。
しかし吹雪の間隙を縫って再び激しさを増した敵の砲撃と雷撃が部隊の撤退を阻む。そして数発の魚雷が彼女たちの周りで幾重もの巨大な水柱を作る。
歯を食いしばりながら必死で回避運動を続け直撃を避ける艦娘たち。
数発の魚雷に続いて誰かが叫んだ。
「注意! ……ミサイル?」
「!
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