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黒魔術師松本沙耶香 騎士篇
第五章
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「そこから任せるわ」
「わかったよ、じゃあコースはどうするんだい?」
「そうね、今日のお勧めがあるから」
 ドイツ語でトマトやカボチャ、茄子の料理が書かれている。スープのところにはパスタがあり全体的な彩は華やかそうだった。デザートは苺のタルトとある。
「こちらにするわ」
「わかったよ、ところであんたアジア系だね」
「日本から来たわ」 
 沙耶香は空いている席に座りつつ親父に答えた。
「それがどうかしたのかしら」
「いや、随分とドイツ語が上手だからね」
「魔術師は語学にも堪能なものよ」
 沙耶香はシェフにくすりと笑って告げた。
「そうしたことにもね」
「あんた魔術師なのかい?」
「ええ、そうよ」
「っていうと手品が出来るのか」
「出来るって言えばどうかしら」
「ちょっと見せてくれるかい?」
「見せてくれたら料金をサービスしてくれるのかしら」
 シェフの目を見てくすりと笑って尋ねた、シェフは既に沙耶香が注文したコースのメニューを作りはじめている。
「そうしたら」
「生憎そうはならないさ」
 笑っての返事だった。
「だから見せなくてもいいけれどな」
「そうなのね、では伊達と酔狂でね」
「見せてくれるのかい?」
「こんな感じよ」 
 軽く言ってだ、沙耶香はまずはシェフに自分の右手の平を見せて。
 その手の平を閉じてから開くとそこには四角い氷の塊があった。シェフはその小さな氷の塊を見て言った。
「確かに魔術師だね」
「見ての通りよ」
「言葉に偽りなしってことか」
「ついでに言うと黒魔術師よ」
 魔術は魔術でもそちらになるというのだ。
「私はね」
「黒魔術師か」
「そうよ」
 文字通りそれだというのだ。
「ちなみにこれは軽い魔術よ」
「ほんの初歩の初歩ってことか」
「私にとっては息をする程度よ」
 それ位のものだというのだ。
「まさにほんのね」
「そうか、じゃあ金はサービスしないがワインはもう一本付けるな」
「二本ね」
「日本から来た黒魔術師さんにな」
「それは貴方のおごりかしら」
「いい手品を見せてもらったからな」
 だからだというのだ。
「それ位は何でもないさ」
「そう、ではモーゼルをね」
「もう一本な」
「宜しく頼むな」
 シェフはまずはサラダを出してきた、レタスとキーウィ、それにパイナップルとセロリと林檎のフルーティーなサラダだ。
 ドレッシングはフレンチだった、だが口にしてみると胡椒が程よく効いている。沙耶香はそのサラダを食べつつワインを飲み言った。
「どちらも最高ね」
「そう思うか」
「最初からね、けれどこれはあくまで」
「そうさ、最初さ」
 コースのというのだ。
「だからもっと楽しんでもらうからな」
「そこまで言うのね」
「ああ、そし
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