第三章
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「大学は午後は休講でアルバイトにも時間があるから」
「好都合ね、ではゆっくりと楽しめるわね」
「ゆっくり?」
「まずは一緒に食べましょう」
昼食、それをというのだ。
「ワインとアイスバイン、ザワークラフトをね」
「貴女アジア系、しかも日本人か中国人の様だけれど」
「日本人よ」
「そこですぐにアイスバインを出すのね」
「これでも美味しいものは目がないのよ」
沙耶香は何時の間にか女の横に来ていた、女の背は沙耶香と同じ位だった。沙耶香は女と共に沙耶香が導くまま道を進みそのうえで話していた。
「お料理にもワインにもね」
「だからなの」
「ええ、アイスバインについても知っているわ。ギドニーパイもね」
豚の内蔵のパイだ、これもドイツ料理である。
「そちらもね」
「そして今から」
「アイスバインとギドニーパイ、それにザワークラフトとジャガイモを潰したものにスープに」
「ワインをというのね」
「一緒に楽しみましょう、いいかしら」
「そこでビールとも言わないのね」
「ビールよりワインの気分なのよ」
女の彫のあるその碧眼を見つつだ、沙耶香は切れ長の目と紅の唇を妖艶に微笑まさせてそのうえで言った。
「赤のね」
「フランス、イタリアかスペインのワインね」
「いえ、トロリンガーのワインよ」
「トロリンガーも知ってるのね」
「ドイツといえば白だけれど」
ワインはというのだ、実際ドイツはモーゼル等白ワインが有名だ。イタリアやスペインがどちらも有名であるのに対してだ。
「赤もあるのよ」
「そこまで知っているのね」
「その本場のワインも味わいたいの」
沙耶香の笑みは妖しいままだった。
「ご馳走と。そして」
「そして」
「それからは食べながらお話しましょう、デザートは」
沙耶香はそちらの話もした。
「ケーキがいいわね」
「そちらね」
「ええ、そうしましょう」
「何か貴女の言うままね、今の私は」
「嫌かしら」
「いえ、初対面なのに何故か」
女は沙耶香のその黒い琥珀を思わせる人のものとは思えぬ異形めいた魅力を見せる目を見つつ答えた。
「そうは思えないわ」
「そうね、それじゃあ」
「今から」
「まずはそのお店に行きましょう」
こう言ってだ、実際にだった。
沙耶香は彼女が行くと決めたそのレストランに女と共に入った、そこで赤ワインと共にアイスバインやギドニーパイを楽しんでだった。
その後でだ、共にだった。
ホテルに入りベッドを共にした、そのベッドの中でだ。
女はその白く整った裸身を横たえてだ、自分の横で半身を起こして煙草を口にしている沙耶香に対して言った。
「確かにアルバイトまで時間があったわ」
「それでもなのね」
「けれどまさか」
「女と、しかもはじめて会った
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