隼は太平洋を翔る夢を見るか?・前編
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鎮守府の業務が終わる夜8時。提督と秘書艦が過ごす執務室はその姿を変える。仕事机と書類棚は消え去り、代わりにシックな雰囲気のバーカウンターとシステムキッチンが御目見えする。執務室の提げ札は外され、ネオン瞬く看板にすげ変わる。看板には『Bar Admiral』の文字が躍る。そう、ここは提督がマスターを務めるバーである。酒好きで料理が趣味、という一風変わった提督が、日夜闘っている艦娘達を少しでも労ってやろうと作った仕掛けだ。美味しく多彩な料理、そして艦娘達が語る悩みや自慢話。そしてちょっとのハプニング。それを肴に今日も、グラスは傾けられるーーー…
カランカラン、とドアの開いたのを知らせるベルが鳴る。
「よぅ提督、じゃなかったマスター。今日も来ちゃったよ〜。」
既に赤ら顔で千鳥足の軽空母が一人、フラフラと開店直後の店に入ってくる。
「まぁたお前か隼鷹。まぁ、給料の範囲内で明日の任務に響かないなら止めないが……少しは自重しろ。」
俺は呆れたようにそう注意するが、目の前の軽空母・隼鷹は顔をにへらっ、と崩してでへへへへぇと笑う。
「わかってるよぉ、ていとくぅ。隼鷹さんは酒は呑んでも飲まれないよ?」
そう言いながらケラケラと笑う隼鷹。まぁ、確かに翌日は真面目に勤務しているから俺も止めないが。
「で、注文は?ビールか?それともいつも通りポン酒か?…あぁ、それとも焼酎にするか?『赤兎馬』のイイのが入ったんだ。」
「いや、今日はそう言う気分じゃないや。……マティーニちょうだい。ドライマティーニね。」
珍しい事もあるもんだ、と俺は思う。普段は同じ呑兵衛仲間の艦娘達と、ビールや焼酎、日本酒なんかの大量に呑みやすい酒が好みだとばかり思っていた。それがこの店が出来てから初めて、カクテルの注文。何かあったのか?と思いつつ、カクテルの準備を進める。
使うのはジンとドライベルモット。割合はジンが4にベルモットが1。それをミキシンググラスに注ぎ、軽くステア(かき混ぜ)してやる。ここで注意すべきポイントは、正確に計量する事と優しくステアする事。どちらも怠れば味は全くの別物になってしまうからだ。そして、それをカクテルグラスに移し、カクテルピンを刺したオリーブの実を飾る。これで『カクテルの帝王』とさえ呼ばれるマティーニの完成だ。俺はそれを2杯用意し、隼鷹に渡した。
「あれぇ?提督もちゃっかり自分の分……」
「うるせいやい、俺も呑みたい気分だったの。……ホレ、乾杯。」
カクテルグラス同士を軽く打ち付け合う。ホントは打ち付け合うものじゃないらしいが、まぁそこは日本人ぽさが出てるよな。
「……はぁ。量少ないけどさ、結構キツいよねコレ。」
「まぁな。アルコール度数は25°〜3
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