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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七話 幕間狂言
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そうだった、レンテンベルク要塞だ。ヴァレンシュタイン元帥はそのレンテンベルク要塞で療養しているのだろう? 出撃などできるのか?」
「大丈夫だろう、レンテンベルク要塞を落としたのは去年の事だ。いくらなんでも治っているさ」
「しかしね、例の噂があるからな」

例の噂か、ホアンとトリューニヒトの会話を聞きながらその事を思った。昨年十二月の初旬、ヴァレンシュタイン元帥はオーディンで襲撃され負傷した。かなりの重傷だったらしい。だがその月の内にオーディンに侵攻してきた敵艦隊を撃破、更にレンテンベルク要塞を奪取し健在を示した。

当初同盟ではヴァレンシュタイン元帥が負傷したと聞いたとき、信じる者は少なかった。以前にも彼を暗殺したとの誤報が流れた事がある。それに類するものだろうと思ったのだ。

だが負傷が事実だと分かった時、かなりの重傷だと噂が流れた時、同盟では帝国領辺境領域への出兵論が出た。もちろん強いものではない、帝国との間では捕虜交換の協定を結んでいるのだ。だがそれでも出兵論が出る、同盟内の反帝国感情の根強さには溜息が出る思いだ。

幸いにも直ぐにヴァレンシュタイン元帥が敵艦隊を撃破、レンテンベルク要塞を奪取した。その事で出兵論は自然消滅した。危ないところだっただろう。当時同盟はフェザーンに極秘に艦隊を派遣していた。あの時出兵論が大勢を占めれば艦隊は何故フェザーンに向かっているのかで大騒ぎになったに違いない。

ヴァレンシュタイン元帥はレンテンベルク要塞を奪取した後、要塞に留まったまま動こうとしない。帝都オーディンを守り、帝国軍全軍を後方から支援統率するためだろう。

だがその事がまた同盟内で疑惑を呼び起こした。ヴァレンシュタイン元帥重態説だ。襲撃されたときかなりの深手を負ったと聞いた。レンテンベルク要塞は落としたが、無理をしたため容態は反って悪化したのではないか……。それが原因で動けないのではないか……。

そしてローエングラム伯の失脚が起きた。元帥と伯は微妙な関係にあると同盟内では見られている。両者とも若い、そして一度は上下関係は逆だった。重病に喘ぐヴァレンシュタイン元帥がローエングラム伯を蹴落としたのではないか?

ヴァレンシュタイン元帥重病説が強まるにつれ、帝国領辺境領域への出兵論が蘇った。そしてフェザーンを占領した今、その出兵論はますます強まりつつある。ガイエスブルク要塞に貴族連合軍の主力が健在な事もその一因だ。

「ヴァレンシュタイン元帥も御苦労な事だな。病身を押して反乱の鎮圧とは」
「何を他人事のように言っている。主戦派を煽ったのは君だろう、トリューニヒト」
私の言葉にトリューニヒトは気の無い様子で“まあ、そうだがね”と答えた。

「だが、フェザーン進駐を長引かせるわけにはいかん。長引かせれば必ず占領しろ
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