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第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#25
FUTURE’S MEMORY〜PHANTOM BLOOD NIGTMAREXIII〜
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たのか、
ジョセフは立ち上がる事も出来ず路面で悶絶する。
 その百数十メートル離れた先には、
古代ローマのコロッセオを彷彿とさせる
巨大な擂り鉢状の陥没痕(クレーター)が拡がっていた。
 そしてその中から、鈍色をした鋼鉄の両翼を羽撃かせ、
紅世の巨竜がゆっくりと姿を現す。
 一体どんな原理で飛んでいるのか、
揚力など無きに等しいにも関わらず激重の巨体は軽やかに宙を浮き
やがてズシンッ! とジョセフの躯を一回跳ね上がらせて目の前へと着地する。
 漆黒の双眸に感情の色はないが、
全身から発せられる威圧感は明らかに怒気を滲ませていた。
「……失望させてくれるものよ、惰弱者めが。
我が真の姿を顕すほどでもなかったな」
 暴風のような吐息を漏らし、イルヤンカは潰れた麦穂のように
無価値な存在としてジョセフを見下ろす。
「ハ、ハハハ、別に頼んではいないのじゃがのぉ〜。
まぁ見ての通り手も足も出ん、腰もヤっちまいおった。
こんなジジイを殺しても自慢になるまい。
ここは一つワシを見逃すというコトで手を打たんか? 
その大きさは伊達じゃあるまい」
 全力疾走の連続で息が切れたのか、ぜぇぜぇとジョセフは呼吸を乱す。
「……」
 矮小なる者の卑屈な態度に、さしものイルヤンカも堰が切れたのか
唸りを漏らしてその断崖のような前脚を持ち上げた。 
 最早一瞥する価値も無いと判断したのか、
一秒後には感触もなく潰される老人に最後の言葉を告げる。
「お主の “次の言葉” は 『所詮人間などこんなもの』 じゃ」
「所詮人間などこんなものか、さらば脆弱なる存在……ハッ!?」
 想いもよらぬ言葉に、自身の心を正確に見透かされたコトに、
意図せずそして本能的に巨竜の全身が止まる。
 眼下で、逆水平に構えた指でこちらを差す老人の表情は、
これから原形もなく圧殺されるコトに絶望している者の表情ではない。
 相手を想い通りに操作している、掌の中で転がしている、巨大な存在でさえ、
そんな、自分の()っている “アノ女” 以上に不敵な(かお)
 驚愕による錯覚か、ソレとも全くの別の理由か、瞬間、
眼下で這い蹲る老人の全身から眩い光が発せられた。




 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッッ!!
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッ!!!!



 封絶の放つ黄霞に紛れ、光の余韻がたゆたう神奇なる光景、
その中心に立つ者、は。
「――フッ」
 神でさえも嘲弄するような、豪放磊落(ごうほうらいらく)を絵に描いたような若き男。
 鍛え抜いた両腕を剥き出しにするノースリーヴのシャツ、
はち切れんばかりの大腿部を微細に誇示する黒革
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