第40話『暗雲』
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し危ない話があってね、『慈悲は要らない。悪には必ず裁きを与える』ってな具合で、団長さんは悪人をドンドンと裁いて行っちゃったの。それで皆が恐がるようになった、ということだよ」
「団長さん可哀想だな…」
晴登は目を瞑り、姿も知らない団長さんを労う。悪いことをしている訳でもないのに恐がられるとは、なんと不憫なことだろう。
だがしかし、その最強である団長さんが魔獣討伐に参加したら、きっと良い結果で終わるに違いない。だって最強と言われるくらいなのだから。
晴登がアランヒルデがどんな人物なのか想像していると、突然ユヅキは一言、
「ハルトって明後日ぐらいに帰るんだよね」
「ん? あぁ…」
ユヅキの問いに肯定で返す。
すると彼女は空を見上げ、寂しそうな表情を見せた。
「どうして帰るの? そもそもここに来た理由は?」
「うわ、今訊くかそれ」
晴登はユヅキの疑問に頭を悩ます。
今まで訊かれてなかったから、その回答は何も用意していないのだ。
大体、現実世界の話から始めなければ、晴登がここに居る理由は理解不能。かと言って、そんな所から話し始めると、恐らく夜が明けるのは確実だ。
「な、何でだろうね…」
「むぅ、誤魔化さないで」
「でも説明した所で理解できないと思うよ?」
「それでもいいから」
ユヅキの怒濤の押しに、晴登は言葉を詰まらせる。
…別に話してダメという訳ではないだろう。
「しょうがないか。実はね──」
*
「この世界に存在しないって、そういうことなんだね」
夕食の食卓。
帰宅時からずっと話していた晴登の過去話にようやく区切りがつく。
突飛な話ばかりだったはずだが、相槌を打ちながら話を聞き入るユヅキは、予想外の理解力を見せた。
「意外とすんなり受け入れるんだね」
「ハルトが言うことならボクは信じるよ? あ、冗談は除いて」
「それは嬉しいけど、でもそこまで信頼されるようなことしたか、俺?」
ユヅキが向ける無償の信頼に、晴登は心当たりがない。死地を潜り抜けるとかならまだしも、まだ会って2日目だ。
…まぁ確かにハプニングやら何やらあって、互いの距離はただの2日のそれではないと思うが、それでもこの信頼は早熟過ぎる。
もしや、なにか裏がある…?
「ハルト、そんなに見つめられると照れるんだけど…」
「え!? あぁ、ごめん!」
「ううん。見たいっていうなら別に…」
「ちょ、こっちまで照れるからそれ以上言わないで!」
恥ずかしがるユヅキの言葉を聞き、自分が無意識に彼女の顔を窺っていたことに気づく。でもって、その後の彼女の反応に制止をかけた。
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