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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四話 キフォイザー星域の会戦(その2)
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てくれ。敵の予備部隊を攻撃し、撃破せよ。その後は敵の後背を突けと」
「はっ」

「どういうことだ、何故予備を動かす」
思わず言葉が出た。どうにも納得がいかない。此処までの敵の動きは忌々しいが見事としか言いようが無い。なかなか反撃のタイミングが掴めなかったのだ。それなのに何故、今予備を動かす……。俺の疑問に答えをくれたのはフロイライン・マリーンドルフだった。

「おそらくヒルデスハイム伯の独断でしょう」
「独断?」
訝しむ俺にフロイラインは落ち着いた口調で言葉を続けた。

「彼は我儘で自制心が無く虚栄心の塊のような人物です。自分の手でこの戦いの勝利を確定しようとしているのだと思います。寄せ集めの軍の弱点が出ました」

「貴族連合の弱点が出たか、リッテンハイム侯も不運だな」
「私もそう思います」
俺の言葉にフロイラインが頷いた。勝利が見えてきた、本来なら喜ぶべきなのだろう。しかしリッテンハイム侯にとっては命運を賭けた一戦の筈だ。素直には喜べなかった。彼女も同様なのだろう、何処と無く表情が沈んでいる。

彼女も貴族の一員なのだ、自分と同じ立場の人間が実力以外の部分で敗北を喫しようとしている。複雑な気持なのだろう。だがそんな彼女に好感が持てた。もし彼女が喜びを露わにしていたら、俺は彼女の才は認めても人格には不快感を感じたかもしれない。

当初予想した展開とは違うがどうやら勝機が見えてきたようだ。しかも敵が勝機をくれた……。妙な話だ、これほどの大会戦でこんな事が有るのか。釈然としないものを感じながら、後はシュタインメッツ少将の手腕が全てを決めるだろうと思った……。



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