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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四話 キフォイザー星域の会戦(その2)
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「リッテンハイム侯の兵力が多いため、我々はどうしても両隣にいるロイエンタール提督、ワーレン提督の支援を必要としています。その所為で両提督は正面のクライスト、ヴァルテンベルク大将を抑えきれない。その分だけ余力を持った彼らはヘルダー子爵、ホージンガー男爵を上手くフォローしているのです」

なるほど、そういうことか……。だからミッターマイヤー提督もミュラー提督も敵を崩せずにいる。ルッツ提督が“敵は意外に連携が良い”と言う訳だ。しかしこれから先、どう現状を打開するのか……。

「味方殺しと侮ったつもりは無かったが、何処かで過小評価していたのかもしれん。考えてみれば帝国の最前線を任された軍人なのだ。無能であるはずが無いな」
ルッツ提督が戦術コンピュータのモニターを見ながら話した。何処と無く忌々しげな口調だ。自分に対して怒っているのかもしれない。

「やはりもっと引き摺り込むしかないな。リッテンハイム侯、クライスト、ヴァルテンベルクを更にこちらに引き寄せる。そうなればヘルダー子爵、ホージンガー男爵を支援する事も出来なくなるだろう」

「しかし閣下、より引き摺り込むとなれば彼らを勢いづかせかねません。今でさえ我々は敵の圧力に苦しんでいるのです。彼らが勢いに乗って攻め寄せてくれば危険です」
「参謀長の仰るとおりです。むしろ予備を使うべきではありませんか」
ヴェーラー参謀長、グーテンゾーン大尉が口々に反対する。

「今の時点で予備を使えばこちらが苦しいと敵に教えるようなものだ。余り良い手とは言えない」
「……」
「クライスト、ヴァルテンベルクがこちらに押し寄せる。望むところだろう、参謀長。そのときこそヘルダー子爵、ホージンガー男爵を撃破するチャンスだ。ミッターマイヤーもミュラーもそれを逃すような凡庸な指揮官ではない。それに合わせて予備を動かそう」

ルッツ提督が落ち着いた口調でヴェーラー参謀長を説得した。
「……分かりました。小官は閣下の御判断に従います。ただし事前に各艦隊司令官に説明をしたいと思います。よろしいでしょうか?」

「いや、駄目だ。敵に傍受される危険がある。参謀長、彼らを信じるんだ!」
力強い、自らに言い聞かせるような口調だった。ルッツ提督は賭けに出ようとしている。ヴェーラー参謀長も覚悟を決めたのかもしれない。大きく頷いた。
「分かりました。艦隊を後退させましょう」



帝国暦 488年  1月30日  23:00 リッテンハイム艦隊旗艦オストマルク  クラウス・フォン・ザッカート



「敵、後退します」
ノルデン少将が弾んだ声を出した。ラーゲル大将が嬉しそうに頷いている。
「リッテンハイム侯、今こそ予備を使うときです。敵の側面を突く、或いは後方にまわらせれば勝敗は決しますぞ」

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