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STARDUST唐eLAMEHAZE
第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#23
METEOR STORMU 〜Black Matrix〜
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えた “地獄” となって魂を蝕み続ける。
 一瞬の中に存在する永劫、
時間の概念を消失した死に至る幻想の中で、
あらゆる苦痛で溶けた精神と同様、
その者の 「存在」 も融け始めた。
 旧約聖書に描かれた、頽廃の都への断罪、
その裁きを顕すかのように、
堕落した咎人の肉は大地に還る事も赦されず、
服と武器を残してこの地球上から完全に消滅した。
「貴様等の 「記憶」 は、 愚かにも 『アノ方』 に手をかけた鬼畜共にも劣らない。
精神(DISC)” を残すにも値しない……」
 厳格で無情なる神の裁き、是非を問う事は赦されない、
しかしソレ故に、凜冽且つ荘厳に場を充たす雰囲気。
 その威光を全身から発する天使に、少女は纏った法衣の前を合わせ
引き寄せられるように近づいた。
「君は 『引力』 を、信じるか?」
 こちらに視線を向けず、残酷の大地を照らす美しい空へ問いかけるように、
天使は言った。
「人と人との間には、我々の想像を超えた力が働いていて、
それがスベテを形造っている。
この 『世界』 を、或いは 【宇宙】 すらも」
 因果律? それとも運命論のような事? 
どんな友愛も慰めも、今の少女には届かない、
しかし天使の発したその問いは、絶望の底にある彼女の心を動かした。
「人と人は、何故出逢うのか? 
そして、何故関係のない者が 『奪われる』 のだろうか?
何が 『悪い』 のか? 誰の 『罪』 なのか? 
主は、何も答えてはくださらない……」 
 死者への哀悼か冥福か、
天使は厳かに十字を切り惨劇の光景に深い祈りを捧げた。
「出来れば、こいつら全員、私が殺してやりたかった……!
隣のお婆ちゃん、もう一人じゃ満足に歩けなかったのに……ッ!
葡萄畑のお姉さん、この前赤ちゃんが産まれたばっかりだったのに……ッ!」
 どれだけ惨たらしく殺しても、
永遠に苦痛が続く地獄に叩き落としても、
それでも尚足らないという憎しみに双眸を裂ける程に張り上げ、
罅の入ったレンズが紅涙で染まった。
「……すまない。私がもっと速く来ていれば。
私の持つこの 『能力』 でも、
失われた 「生命」 を元に戻す事だけは出来ないんだ。
本当に、一体何の為に在る能力(チカラ)なのか、
自分でも解らなくなる時がある」
 轟々と燃え盛る猛火の中、渇いた風が少女と天使の傍を駆け抜けた。
「……でも、護ってくれた。
私の生命は、救ってくれた。
神様でも聖霊でもなく、
「人間」 のアナタが……」
 見上げたその先に、宝珠のような黒い瞳があった。
 こんなに綺麗な瞳を見たのは生まれて初めてだったけど、
その裡には自分と同じ深い 「悲しみ」 の色が滲んでいた。
「……さぁ、みんなを、神の御許に送ってあげよう。
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