第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#23
METEOR STORMU 〜Black Matrix〜
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カクマッタモノモ “ドウザイ” ダッテ。
自分が、あの子にあげたモノ、気に入ってくれて、いつもいつも一緒だったのに。
ナニモシラナクテモオナジ
“てろりすと” ダッテ。
野卑な手に掴まれた制服が、右袖ごと胸まで引き裂かれた。
同時に周囲から沸き起こる、人間とは想えない悍ましき笑い声。
これから何をされるか、理解は出来なかった。
ただ、落ちた制服の袖を、ぼやける瞳で見つめた。
お母さんに、見せたかったのに、あの子にも、着させてあげたかったのに。
暗闇から伸びる無数の手が、少女の心を引き千切っていった。
もう、何も感じなかった。
スベテが終わったと想った。
そのとき。
荒れた地面へ押し倒された少女に、死肉を貪る野獣のように群がっていた
男達が、動きを止めた。
突然暗い影が消え、眼を刺すような逆光が視界を充たす。
弛めたベルトを直しながら、指揮官らしき男が苛立たしげに何かを叫んでいた。
向けられた銃口、意味不明の恫喝、その先、に。
『――ッ!』
天使が、いた。
静謐な色彩を称える司祭平服と神聖な光を放つロザリオ、
縁の長い帽子で目元を隠した 『黒い天使』 が。
おそらくは止まれと言っていた兵士達の声を無視して、
その天使は仰向けに横たわる自分の傍で跪き、
纏っていた法衣をかける。
温かく、柔らかく、その振る舞いが紛う事ない慈愛に充ち充ちていた為、
止まっていた涙が一斉に溢れた。
その背後で、悪魔のような咆哮。
向けられていた自動小銃の筒口が一斉に火を噴いた。
着弾は疎か、掠っただけでも肉を骨ごと殺ぎ飛ばす残虐の嵐。
だがその数百発の弾丸は、天使のいる数メートル先の距離で音もなく停止し、
やがてバラバラと引力にひかれ落下した。
表情の伺えぬまま、悠然と立ち上がる黒い天使。
錯覚か斜陽の加減か、見上げるその姿に後光が差しているように見えた、
光の翼が拡がっているように視えた。
驚愕に畏怖に、後退る男達を天使は土塊のように見据え、
その禁断の果実を想わせる口唇から天啓の如き声で言い放った。
「貴様等に…… 『天国』 へ行く資格はない」
言葉の終わりと同時に、空間の歪むような音が少女に聞こえた、
確かに、聴こえた。
『幻 想 の 白 蛇……』
一言。
その、たったの一言。
ソレだけで、目の前の、否、集落全域に蔓延る
人の皮を被った悪魔達が一斉に叫び出した。
鼓膜を掻き毟るような、阿鼻叫喚の大連鎖。
脳裡に烙印の如く刻まれる、この世ならざる幻想。
しかし苦悶は、恐怖は、そして絶望は、
現実を遙かに超
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