暁 〜小説投稿サイト〜
STARDUST唐eLAMEHAZE
第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#23
METEOR STORMU 〜Black Matrix〜
[3/14]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
の 『世界』 は、自分達が想っているよりもずっとずっと大きくて、
どこまでも果てしなく広がっていて、知らない事や凄い事がたくさんある。
 都会の学校から戻ったら、今度は自分がこの村に学校を作ろう、
そして自分が覚えた事、学んだ事、全部みんなに教えてあげよう。
 生活や仕事には役に立たないかもしれないけれど、でも、
知らない事を知る事が出来るのは、何より楽しい事だから。
出来ない事が出来るようになるというのは、何より嬉しい喜びだから。
 少女の心には、清らかで爽やかな風が吹いていた。
 ソレは、いつまでもいつまでも、谷間の集落に吹き続ける筈だった。
 …… 
 試験に合格し、真新しい制服姿でバスを降りた少女は、
一目散に集落への帰路を急いだ。
 村からバス停まで徒歩で30分以上かかるが、
山歩きに慣れている少女の走りはその時間を半分に縮めた。
 早くこの制服を、両親に見せたい。
 立派な革で出来た鞄を、あの子達に触らせてあげたい。
 何より、自分の合格を我が事のように喜んでくれるみんなの笑顔が見たい。
 通常の帰路を行くのももどかしく、途中脇道に逸れ渓谷の上から
村全体に呼び掛けようとした時。
『……』
 無垢な笑顔が凍り付いたまま、真新しい学生鞄が地面に落ちた。
 猛然とした熱風が、二つに括った後ろ髪を揺らした。
 紅蓮。
 一面を取り巻く、赤、紅、朱、あか、アカ……!
 絶対に絶対に在り得ない光景が、少女の眼下に拡がっていた。
 自分が生まれ育った集落が、木造の家が、小さな牧場が、慣らされた耕地が、
ドス黒い煙を立ち上らせる炎に包まれていた。
 一瞬。
 本当に、一瞬。
 今朝門をくぐったときは、何も変わらぬいつもの風景だったのに。
 それなのに。



 オトウサン、オカアサン、トナリノオバアチャン、ミンナ……



 どこをどう歩いたのか、虚ろな瞳のまま少女は焼け落ちた門の前にいた。
 視線の先に大勢群がるのは、重火器を肩に携えた軍服姿の人間達。
 自分の姿を認めると、下卑た嘲笑を浮かべながら
ブーツの踵を鳴らして歩み寄ってきた。



 キイタ、コトガアル。



 周囲を囲む、暗い影、硝煙の匂い。



 ヤマヒトツコエタバショデハ、
“フンソウ” ガアッテ、
「ニゲタモノ」 トソレヲ 「オウモノ」 ガイルト。




 影の隙間から、見えた光景。
 誰が誰とも、判別が付かなくなった肉の塊、飛散した四肢。



 ソシテ 「ニゲタモノ」 ハ、
ドコカノシュウラクニミヲカクシ、
「オウモノ」 ハ、ソノシュウラクゴトヤキハラウ。



 血に濡れた人形が、地面に転がっていた、何度も何度も、踏み潰された跡があった
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ