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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三話 キフォイザー星域の会戦(その1)
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顔を見せた。いぶかしむ私に“なかなか華々しい最後になりそうですな”と嬉しそうに言ってくれた。その笑顔に何も言えなかった。ただ“すまぬ”と言って頭を下げる事しか出来なかった……。

門閥貴族としての生き様を貫いて欲しいか……。ヴァレンシュタイン、どうやら卿の願い通りの死に方が出来そうだ。覚悟は出来ている、この私の死で味方が一つに纏まってくれるのならこれ以上の死に様、いや生き様は有るまい……。



帝国暦 488年  1月30日  20:00 ルッツ艦隊旗艦 スキールニル  コルネリアス・ルッツ


指揮官席に座りながら眼前のスクリーンを見ていた。そこには敵の大艦隊が映っている。正面戦力は五個艦隊、後方に予備が一個艦隊だ。陣形そのものはこちらと大差ないものになった。だが予想外の事が有る。敵の中央の艦隊は一際規模が大きい、二万隻以上有るだろう。おそらくはリッテンハイム侯が率いる艦隊だ。

どうやら俺があの艦隊の攻撃を受け止める事になりそうだ。厳しい戦いになるだろう。だが残りの艦隊はそれぞれこちらの方が兵力は大きいようだ。つまり中央を突破されるか、防ぎきって敵を両翼から崩す事が出来るかの勝負になると見ていい。

かなり押し込まれるだろう、危険な状態になるかもしれない。両隣に居るワーレン、ロイエンタールと連携をとって艦隊陣形をV字型にする。いや自然とそうなるだろう。そこで耐える。俺に出来る事は耐える事だけだ。

後はミッターマイヤーとミュラーが敵の両翼をどれだけ叩けるかだ、そしてシュタインメッツの投入時期。敵も予備を用意している、投入時期が勝負を分けるかもしれない。

「敵との距離、百光秒」
オペレータの声は緊張を帯びていた。艦橋の空気がその声に応えるかのように重苦しいものになる。俺の傍にはフロイライン・マリーンドルフが居る。表情が青褪め強張っていた、そしてスクリーンを睨むように見ている。初陣でこれだけの大艦隊が辺境星域の支配権を賭けて雌雄を決するのだ、緊張も恐怖も有るだろう。

この戦いが始まる前、彼女には艦から降りるように勧めた。彼女は軍人ではない、艦から降りる事は決して不名誉にはならない。だが彼女は俺に感謝を述べつつも退艦する事を拒んだ。“自分は自分の意志で此処に残る事を選びます。味方を見捨てて逃げる事は出来ません”。

伯爵家の次期当主に万一の事が有ってはマリーンドルフ伯に申し訳のしようが無い、そう言って退艦を進めたが“別働隊に同行している以上、父も覚悟はしています”そう言って彼女は笑みを浮かべるだけだった。

負けられない、傍にいるフロイライン・マリーンドルフを見て思った。もし負けたらどうなる? 彼女は最後をも共にしようとするだろう……。また一つ背負う物が増えた。

地位が上がり、権限が大きくなるに伴い、
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