第12話『造られし者〜対峙した時代の光と影』?
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『アルテシウム中心都市ルテティア・ガヌロン公宮・応接室』
凱がアルサスから異端容疑で連行される数日前のことだった。
マクシミリアン=ベンヌンサ=ガヌロンはグレアストを招致して、定例の密会を行っていた。
月が天空に浮かび上がり、密談の役者をほんのりと照らす。夜の最も深いにも関わらず、月は雲を得て朧と化している。忌々しい程の光量が降り注いでいる。
そんな虚影のような風景が、ガヌロンの瞳にとって好印象に映えるのだった。
「今夜は寝かせませぬぞ。閣下」
そうグレアストが遠回しに忠告しては、ガヌロンの承諾を確認した。つまり、とことん付き合うという意図表示だ。
ガヌロンは背後に控える従者に命令する。
「おい。林檎酒を大量に用意しろ」
恭しく一礼して、従者は退出する。しばらくの間をおいて、ガヌロンの好物がテーブルの上へ運ばれていく。
熟成の高い林檎酒を両者は一口含み、前置き無くグレアストは切り出した。
話題はまずこれだ。
――テナルディエ軍と同じく、ガヌロン軍もまたアルサスへ侵攻した。ちょうど凱とテナルディエ軍が交戦していた時――
そのガヌロン軍を率いていた指揮官がこの白髪の男、カロン=アンティクル=グレアストだったのだ。
閣下と仰ぐこの男の命令とはいえ、やはり気が乗らない。この目に留まる美女でも鹵獲?しなければわりに合わないというものだ。
だが、そのくだけた妄想は半分だけ実現することとなった。
アルサスへ進軍中、マスハスを中心とする有力貴族の迎計略に遭い足止めされているにも関わらず、グレアストは続々と斥候を放った。
恐怖で支配する指揮官の斥候からもたらされた『銀』と『金』の報告が、耳部をピクリと踊らせた。
――銀閃の風姫と黄金の騎士――
『銀』のほうは幻想的表現なのだが、『金』については、文字通り物理的表現でしかない。
銀閃の風姫は既知済み。比類ない美貌の持ち主にして、希少な銀の髪の持ち主、磨かれたワインのような紅玉の瞳の持ち主だと。
しかし、黄金の騎士の報告だけは、心にとどめるだけにした。グレアストの直感だが、これはなかなかの土産話になりそうだと感じたからだ。
「アルサスでこのような戦噂を聞きまして……一人の流浪者がアルサスの防衛に力を譲渡したと」
林檎酒の味を転がしていたガヌロンの舌が、ピタリと止まる。
「面白そうだな。酒の肴の代わりに聞かせろ」
従者に用意させた林檎酒を再び飲み、グレアストの話材にガヌロンは喰いついた。
それからグレアストは詳細を語り出した。
抵抗戦力のないアルサスはただ蹂躙されるだけかと思われた。略奪で戦意が堕墜しきった兵士の隙をついて、漁夫の利を憑こうとしていた。
――そうなることが、ガ
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