第12話『造られし者〜対峙した時代の光と影』?
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錠……今の凱は首輪と連結した手錠をかけられ、ガヌロンに連行されている。
まるで凱を覆い隠すかのように、ガヌロンの従者達は異端者を取り囲んでいる。
「ご苦労だった。グレアスト卿」
腹心に労いをかける性醜な小人は、どこか満足そうにうなずいた。
マクシミリアン=ベンヌッサ=ガヌロン。その皮膚の薄さは「鳥の骨」とも称されるほど薄く、皮と骨でどうやって動いているのか?ともいわれている。それに拍車をかけるように、基本的にガヌロンは笑みを絶やすことはしない。例え味方であろうとも、自分に敵対する者には容赦がない。だが、そうでない者には軽々とした態度で応じ、何かしら助言めいたことを告げる、謎の多き人物である。
故に、ガヌロンの残酷加減は、時折味方にさえ及ぶのだ。
そういった意味では、弱者なら味方に獅子の牙を向けるテナルディエと類似している。
両者の『過信』は『禍信』となって、『覇道』と『邪道』を阻むものを容赦しないのだ。
不遜な空気が漂う王宮にて、一人のぐんずりとした老人がこちらへ歩いてきた。
「……ガヌロン公爵」
ふいに、マスハスがつぶやいた。
それに対して、ガヌロンは親しみのある口調で返事した。
「おお、マスハス卿ではないか」
明るい口調のガヌロン公。その体に纏う雰囲気と相反する明るさが、かえってマスハスの警戒心を強める結果となる。
(マスハス卿!?)
そんな凱の心配を無視するかのように、ガヌロンはマスハスに謝辞の声を漏らした。
「あの時はすまなかったな。アルサスへの救援が間に合わず、ヴォルン伯爵に何と詫びればよいか……」
一体何のことだと、マスハスと凱は思ったが、半瞬の間で思い当たる節を見つけた。
少し前、テナルディエ軍がアルサスに侵攻しようとした時期、ガヌロンもアルサスへ向けて軍を動かしていた。ただ、どのような思惑でガヌロンが軍を派遣したのかは、誰にも分らない。
「いきさつはわからんがな。ある有力貴族の集団が、我が軍を関節的に足止めしたと聞いている」
間違いない。ガヌロンは知っている。
確か、バートランさんが言っていた。
テナルディエ軍を凱が食い止めていた時、ガヌロン軍を食い止めていたのはマスハスだ。
それにしても、とんでもない嫌味だ。
2大侯爵家が人道的見解に背を背けているからであり――
どちらかが先に到着した地点で、アルサスは無人の荒野になることに変わりはないのだ。
もし、マスハスがガヌロン軍を食い止めていてくれなかったら、アルサスがどうなっていたか分からない。
「……それは、感謝いたします」
そう感謝の意を述べるものの、マスハスの顔がかなり青ざめている。
「いやいや。非道なるテナルディエ軍から民を護るのは、臣下として当然の務め。同じ臣民同士、体を
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