第12話『造られし者〜対峙した時代の光と影』?
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目に見える結果を信じる。黄金の騎士である獅子王凱を信じるのも無理はない。
もし、ブリューヌの現状に不満を抱き、アルサスが力を蓄え、凱を筆頭に決起するときが来たら、この国の抱える勢力は乱立してしまう。
――テナルディエ――
――ガヌロン――
――ジスタート軍率いるヴォルン――
――アルサスの民を、周辺領地の民を扇動する可能性のある凱――
そうなれば、このブリューヌはすぐさま無法地帯と化し治安機構は維持しなくなる。
凱と同じ声のボードワンなだけに……その事務的な言葉がマスハスの脳髄を刺激する。
「ここまでの現状を招いたのは、『末端』より『中心』を選んだおぬしらだろうが!目の前の牙を恐れて未来におびえるのか!」
ジスタートという黒竜の化身を始祖とする『竜の牙』
そして、『眠れる獅子の一節』を彷彿させる獅子王凱の『獅子の牙』
それ以外にも、「ブリューヌを虎視眈々と狙う飢狼の牙」たくさんだ。
「マスハス」
ボードワンは深い溜息をついた。
「私の言動、行動、挙動は全てブリューヌの存続を第一に考えて決めています。ゆえに、叛逆と異端の処断に変更はありません」
「たとえ、テナルディエ公爵やガヌロン公爵であろうとも?」
震える声を抑えて、マスハスは切り返した。
階級の高低差はあろうとも、王に忠誠を誓う貴族である以上、もしテナルディエやガヌロンも他国の軍勢を引き入れたら、同じ扱いを受けなければ納得できない。
マスハスのやや挑発的な口調にも関わらず、ボードワンは我が意を得たりといった表情で、マスハスに振り向いた。
「大義。正義。どちらでも構いません。異議に対する定義を、そして恩義を抱く。そういった方々が罪を問われないのです」
「……そうか」
過去、ブリューヌの混迷だった時代、テナルディエもガヌロンも一時は救国ともいえる活躍を成したのだ。
革命派のテナルディエは、維新という形で国に貢献したように――
保守派のガヌロンは、王に付き添う敗者という形で国の構築に生涯をかけた――
「大義……それに匹敵する……」
ここまでつぶやいて、密会は中断した。
いずれにせよ、上奏は敵わない。だが、これで今後の行動は明確になった。
まずはテナルディエ公爵を討つ。現状を打破するにせよ、今後の憂いを取り除くにせよ、まず対立関係にある貴族の対処だ。
今だアルサスと接点のないガヌロン軍は、対処として2番手でいいと思われる。1番手はやはり御子息を打たれたテナルディエで確定なのだから。
礼儀を失しない程度の歩み脚で、マスハスは王宮を抜けていった。
◇◇◇◇◇
よそから見れば、凱を連行する一団はどこか危険なにおいが漂っている。
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