第12話『造られし者〜対峙した時代の光と影』?
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そのジスタート軍が介入するまでの間、一人でアルサスの民を護ってきたのが、『流浪勇者・獅子王凱』なのだ。
溜め込んだ重い息を、マスハスは一気に吐き出した!
「……もう一度言うが、アルサスをテナルディエ軍が襲ってきた時、騎士のひとりも現れなかった!!最早この国は一介の流浪者に頼らざるを得ない程、脆弱であることがジスタート軍に露呈されているのだぞ!」
自分自身への皮肉も込めて、マスハスはボードワンの癇に叩き付ける!
おそらく、アルサスへ駆けつけたジスタート軍も、―凱がたった一人でアルサスを防衛していた―という不可解な戦況を目撃しているはずだ。
国と民を護るべくの騎士団。領地への被害を守ること敵わずとも、国民を守るべく、一個の騎士団が救達、もしくはテナルディエの暴挙を止めようとしたはずだ。しかし、結果的に民を護ったのは『騎士』ではなく『勇者』だった。
度重なるマスハスの口酷に、この頑固な宰相は怒りをこらえ切れず、ついに反撃を開始した!
「一介の流浪者といえど、野心や欲がないとは言い切れまい!単なる正義感や親切心から力を貸したとお思いか!?」
「単なる正義感や親切心だからこそ!見返りもなく不退転の覚悟で!アルサスの民を護ったのだろうが!」
「見返りがないから危険なのです!本当は人に言えないほどの大きな野心を抱えているのではないかと!」
「わし等はガイ殿の人となりをよく知っておる!国に仕えないからこそ、心正しき選択を取れるのだ!自分の未来を恐れずに!」
「いずれの国にも仕えないから、大陸を流れるから流浪者なのです!もし!彼が民を扇動してブリューヌに牙をむき出しにした時、ヴォルン伯爵やあなたはその『異端』を止めることが出来るのですか!?」
ここまでボードワンが凱を警戒する理由はある。
ブリューヌ建国時における異端排除は、宰相や法定官が最も頭を悩ます事項である。それは、異端というものがどれだけ『国』にとって恐ろしく、何より防ぎ難いものか。ボードワンは実体験で知っている。
農法、工法、政法は国を循環する3柱のシステムであり、神の代理たる『王』がそのシステムを管理する。
しかし、システムである以上、必ず『虫』が生まれる。自立の芽が息吹いた領地で叛乱が起きた歴史もある。ブリューヌもその一つだ。
さらに、派遣した異端審問官の報告によれば、獅子王凱はアルサスの民に高い信頼を得ている。
――騎士なんか信じられない!オレたちは勇者を信じる!――とまで言われる始末なのだから。
確かに、それは否定できない。なぜなら、騎士を動かすのは『命令』で勇者を動かすのは『理由』なのだから。
よって、『臣民』より『国民』のほうがはるかに単純だ。目に見えないものより、
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