第12話『造られし者〜対峙した時代の光と影』?
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張ってでも守らなければ」
ガヌロンはにっこりと微笑んだ。本来なら、安心感を覚えるべき言葉なのであるが、どうもガヌロンの口から語られると、マスハスには不安にしか感じ取れない。人間は直感でそれらを判断すると言われているが、もしかしたら、それは本当かもしれない。
しかし、マスハスも黙ってばかりではいられない。あたりさわりのない会話で、ガヌロンの動向の片鱗でも探らなければ。
「ところで、ガヌロン公爵は何故王都へ?」
「一人、アルサスで異端者が見つかったのでな」
「アルサスで異端……」
先ほどボードワンから異端者について聞いたばかりだ。よりにもよって対象者が凱だとは思っていなかった。
今日は絶句が多い日だ。喉の渇きが、今の季節と相まって加速させる。潤したい気持ちが、マスハスを煽らせる。
「では本日、その神の教えを示されるのですかな」
マスハスは緊張を抑えて何とか訪ねた。対してガヌロンは首を横に振る。
「まずは裁く。なぜなら、その判別は天上の神々がなすからだ」
やはり、この異端審問と認定速度、何かがおかしい。嵐の前の静けさの雰囲気さえ感じる。
「ではこれで失礼する。マスハス卿……そうだ。『鎖』には気を付けられよ」
鎖とは一体何の事か、それを理解した時、危機となって訪れる。
◇◇◇◇◇
――異端審問開幕までの間、ガヌロンは一人宮殿の庭園でくつろいでいた。
「庭園……そう。ここは貴様が闊歩する箱庭ではない……」
そんな風に、ガヌロンは悪態をついていた。思わず箱庭と揶揄したことには、ガヌロン家の歴史が関係している。
テナルディエ家と双璧を成すガヌロン家は、ブリューヌ建国以前より存在する、いわば『大陸の庭師』である。
伸びすぎた芽は刈り取る必要がある。
かといって、乱刈ばかりでは、『芽』はいつまでも『樹』にならない。
大陸に根を張り始めた『世界樹』の『葉』に、ときおり『害虫』が紛れ込む。
そう。数多の時間を超越して出現した獅子王凱のように。
命を大なり小なり削っては、そうやって時代の調和を保ってきた。保ってきたというのに……
「女神の……痴れ者が……」
そうガヌロンが愚痴をこぼしたとき、後ろに、女性の気配を感じ取る。
自分の影に入り込む独特の気配を、ガヌロンは知っている。長距離移動を可能とする通路にして窓口をつくる戦姫の事を――
封妖の裂空・エザンディス・幻の竜の技『虚空回廊』。
空間を超越して、至近と目標を繋ぐこの技は、『山脈』や『海峡』といった途上障壁を、『国境』という政治的障壁すらも、やすやすとかいくぐることが出来る。
「これは、これは。ヴァレンティナ=グ
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