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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 魔女のオペレッタ  2024/08 
最後の物語:嘘の魔法
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いるにせよ、彼女の危なっかしい様子を見ていては流石に躊躇ってしまう。アルゴは基本的には売れる情報は売るというスタンスを貫いている。情報屋としての矜持故だが、言わずもがな例外は存在する。
 例を挙げるとするならば、その情報がプレイヤーを危険に晒すものや、プレイヤー間に不和を齎すようなもの。今回であれば前者に該当するだろうか。
 言うなればプレイヤー達が円滑に、且つ安全にに攻略を進められたり、そこに支障を来すような情報は取り扱わないというルールを設けているのだ。ラフコフ捕縛作戦における情報収集を引き受けたのは相対的に《今後のPK被害の低減》を見越しての荒療治という意味合いでの事だ。フィーが自発的に死地へ向かうというからには、アルゴとしては情報提供を了承するには躊躇が。


「………怖くない、わけじゃないんです。………ですけど、それでも、どうしても………! 私は………行かなきゃいけないんです……!」


 それでも、フィーは揺るがない。
 伏しがちだった視線がゆっくりとアルゴの双眸を捉えると、そこに映る眼光には先の萎縮していた筈の、小動物じみた弱々しさはなかった。まるで人が変わったかのような、若しくは、弱音に押しつぶされそうになっても踏み止まらねばならない一線が彼女にはあるかのように、その毅然とした表情には譲歩を引き出す余地さえ見せない。その愚直さはまるで、どこかの草臥れた(くたびれた)黒スーツを案じる細剣使いの少女に似通っているようにも見えて、アルゴの中にある大前提さえ僅かに揺らぎ、思わずたじろいでしまう。
 だが、そんな折でさえ、アルゴの目端は曇らなかった。
 徐々に熱を帯びて語気の強まるフィーの目尻に、涙が溜まる様を捉えたのである。


「私はあの子に、まだしてあげたい事がたくさんあるんです! せっかく楽しいことを知って、笑顔もたくさん見せてくれるようになって、これから………これからもっと一緒に過ごしていく筈だったのに、……なのにあんなに震えて、怯えて、怖がって、大声で泣いている姿が最後なんて、それでもう会えなくなるなんて、そんなの絶対に嫌なんです!!」


 思わず、息を呑む。
 フィーという少女が内に秘めた焦燥と恐怖の、大粒の涙を伴った奔流を目の当たりにして、言葉を失ってしまう。
 これほどまでに誰かを想えるようになった経緯を、たった今出会ったばかりのアルゴは当然知る由もない話だ。だが、この訴求に応じなければ、きっと彼女は壊れてしまう。もしかすれば、もっと無謀な選択肢を選んでしまうかも知れない。先程までの危なっかしさとは異質な、目を離せば壊れてしまいそうな鬼気迫る覚悟に気圧されつつも、アルゴは思考する。
 フィーの発言の中にあった《ゴドフリー》や《ダイゼン》という名前は血盟騎士団の幹部か乃至は部隊を指揮する立場に
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