暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 魔女のオペレッタ  2024/08 
最後の物語:嘘の魔法
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立たない話ではあるが、新規の狩場を捜索するにあたっての準備もあってのことで已む無しと言い訳を盾に、椅子の背凭れに寄りかかると間もなくして出入口のカウベルが来客を店内に知らせる。足音は最寄りの席ではなく、恐る恐るとアルゴへ迫り………


「ひゃ!? ………うぅ、いったぁ………」


 凹凸のない滑らかなフローリングの上で器用に躓き、アルゴの足元に女性プレイヤーが盛大に転んだ。滑らかなプラチナブロンドがふわっと四分円弧をなぞって急降下し、あわやテーブルの脚に額を打ち付ける惨劇は破壊不能オブジェクトを示す紫のシステムアナウンスの発生によって回避されるのだが、オブジェクトが対象を退けるべく発生させた斥力によって弾かれ、今度は床に側頭部をぶつける憂き目に遭う。目尻に涙を浮かべながら、こめかみを(さす)る様子は客観的にはコミカルに映るが、床にぶつけた激痛は抑制されても、その後に残る疼痛までは緩和されなかったらしい。見るに見かねたアルゴは不承不承に手を差し伸べる。


「なかなか上質なコント、ごちそうサマ。怪我はしたくても出来ないから安心しナ」
「そういう問題じゃないです………当事者的には床が迫ってきてすっごい怖いんですから…………」


 むくれながらアルゴの手を取って立ち上がる女性プレイヤーは装備していた着衣の裾をはたく。
 一見するに、装備は白の地に赤の意匠の施された胴衣。圏内だから目に見えた防具は装備していないようだが、紛れもなく《血盟騎士団》に所属するプレイヤーである。それにしては危なっかしい印象だけが際立つ女性プレイヤーを、アルゴはやや訝しむように観察すると、当の女性プレイヤーはやや及び腰になりつつアルゴを上目遣いに窺う。どうやら、意図せず鋭くなってしまった視線に萎縮してしまったらしい。


「………なんだヨ?」


 しかし、このまま無言で何かを訴えるように見つめられていても虐めているようでならない。
 やや気乗りしないまま、アルゴは女性プレイヤーに言葉を投げかけることにする。


「ふゃい!? え、えっと………あの………アルゴさん、ですよね?」
「そうだケド?」
「よかったぁ……間違ってたらどうしようって不安で………」


 対面してから既に異彩を際立たせる彼女には、関わると厄介なことになると第六感が警鐘を鳴らしているのだが、相手は腐っても血盟騎士団所属。攻略組最強の称号を欲しいままにするギルドであるだけに金払いだけは抜群に良い。実際にフレンド登録を済ませた固定客まで存在しており、信頼度も申し分ない。気掛かりな点が無いわけでもないが、自分を訪ねて来た顧客の前には些事に等しい。秤に掛けるまでもなく、断る理由となり得なかったのである。


「で、フィーちゃんはわざわざオイラ目当てで来たんだろう
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