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さて、改めて自己紹介しましょう。 私はエドヴァルド・ロックス、知っての通りデトワーズ皇国の重鎮です」
「ぇ、あ、どうも。 僕、レヴァンテン・マーチン……元、傭兵です。 一応」
出来る事なら早急に現役復帰を希望…とは口には出さず、ヘコヘコと頭を下げておいた。
「そう堅くならなくていい。 同郷なのですから」
「え?」
「私の生まれはデトワーズ皇国ではなく、あなたと同じエンリル地方の出身です。 わかるでしょう?」
―――やっぱり。
僕はその言葉の意味する所を理解した。
エンリル地方。 田舎同然の辺鄙な地方ではあるが、言葉に若干の訛りがあって同郷の者なら何となく互いにわかるのだ。
もしかして…とは思っていたけど、懐かしい事に本当に同輩だったようだ。
「あれ? でも……宰相、なんですよね?」
「ええ。 爵位を持つ者などいない辺鄙な地方の生まれでありながら、一国を左右するほどの地位を得た男。 いわゆる成り上がりというものです」
それって…メチャクチャ凄くないですか?
故郷のエンリル地方は寄り合いの村が多い土地だったから出世とは無縁だ。
そこの出身の者が成り上がるって…同輩とは関係なしに、格の差がありすぎて逆立ちしても勝てる気がしない。
「ですので、同郷のよしみで堅くならずともいいですよ」
「は、はぁ…」
“同郷のよしみ”…初めてそんな風に言われた事で少し戸惑いつつも、自分はロックスに対して少し肩の力を抜いた。
小市民的な性根はいまだにビビっていて、心の片隅でガタガタと震えているけれど…。
「あの…」
「なんでしょう?」
「でしたら、素朴な疑問なんですけど…一つ訊いてもいいですか?」
控えめに挙手して、軽〜く、や〜んわりと、当たり障りの無い質問を投げかけてみる事にした。
ほんのちょっぴり羨む気持ちが混じって、この疑問だけはどうしても気になっていた。
「そんなに偉くなったのなら、なんで…もっと美味しい物を静かな所で食べないんですか?」
何もこんな所で―――という言葉は飲み込んだ。
お偉いさんであるのなら、贅沢に豪華な食事を誰にも邪魔されず優雅に満喫する。
そういうものではないのだろうか。 それが地位の、身分の、権力の旨い所では
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