EPISODE06勇者X
[4/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
リーはげほっとむせ返った。後ろを振り向くと、そこには二人の上司、ハンニバル=クエイサーが満面な笑みでたっていた。その傍らには、市長のヒューゴー=ハウスマンもいた。
ニヤニヤした顔がいやらしいぜ。団長。
「ついにキャンベル家のメジャーデビューだな」「私の自己紹介ははいってません!」「なんだ。残念だ。そんなに胸でかいのに」「胸は関係ありません!」と赤髪の騎士とその団長の漫才を、凱はおもしれーやと思いつつ見守っていた。
気がつけば、市長もセシリーの胸を見つめていた。恥ずかしさでセシリーが「市長もどこ見てるんですか!?」
とぷりぷり怒っていた。今まで知らなかったが、意外なことに、ヒューゴーもスケベだった。
団長と市長にいじられ続けるセシリーが可哀想に思えてきたので、凱はちょっと助け舟を出すことにした。
「団長、本当に悪魔は来るんでしょうか?」
「来るだろうな。先日の盗賊団がそうだったように、悪魔契約を平気で使ってくる奴らだ。何をしでかすか分からん」
悪魔契約を平然と使う奴らが欲するもの。
魔剣アリア。彼女そのものだ。
今回の『市』開催は、かなりの冒険だと凱は思えてならない。
都市の収入源も大事なのは、凱にも分かる。しかし、犠牲となる人の命と天秤にかけていいものなのだろうか?
一時はそう思った。だが、凱が考えている以上に、市長もそれは十二分に分かっているはずだ。ヒューゴーとしても苦渋の決断だったに違いない。だから昨日の深夜の会議にこういったのだ。
――全ての責任は私がとりましょう――と。
ならば、俺の指名は何としても黒衣の男をお縄にする。それだけを考えよう。凱の生命の恩人である市長に報いるためにも。
セシリーにとっても、アリアと結べた友情を「束の間」になんかしたくないはずだ。騎士と魔剣の絆を誰よりも知っているのは凱において他にいない。
やがて「セシリーさん、お願いします」と女性の司会者が楽屋裏まで呼びかけに来た。
「出番だぜ!セシリー!」
緊張でなかなか足が進まないセシリーを見かねて、凱は彼女の背中を一押しする。
「わわ!ガイ!?」
突然背中を押され、セシリーは前につんのめりそうになった。後ろを振り返る。
凱は力強い笑みをセシリーに向けた。セシリーにとって、それが彼女に対する最大の励ましに思えた。
「気負うなよ」
「ガイ?」
「俺たち一人ひとりが出来ることなんてたかが知れている。でも、俺たちは『自衛騎士団』だ……」
ここまで言い終えると、凱は指を人差し指、中指、薬指三本立てる。そして指を折りながら要約する。
「敵が出現する」
薬指を折り――
「住民を避難させる」
中指を折り――
「俺たちがそいつを倒す」
最後に、指の中で一番長い人差し指
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ