暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
マザーズ・ロザリオ編
第241話 不穏な影
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3人はぴたりと脚を止めた。もう既にボス部屋前の長い回廊も半ば以上踏破していて、つきあたりのおどろおどろしい装飾を施された石碑の細部まで見て取れる。隠れられるような場所は無く、モンスターの影も何も無かった。
 
 だが、リュウキはただただ見つめていた。……その目は血の様に赤い。

 その視線をアスナ、そしてレイナが追いかける。その先にあるのは装飾の1つである柱。リュウキは、多分 視えている(・・・・・)のだろう。
 アスナもレイナも、完全に、とまではいかないが、違和感を感じる事は出来た。

 互いに見合わせると、アスナはワンドを掲げた。
 早口で唱える少し長めの詠唱。それが完了すると、手のひらの上に胸鰭を翼のように長く伸ばした小さな魚が現れた。示して5匹。
 青く、透き通る魚たちは、アスナの息吹でゆらゆらと空中を泳ぎ……、軈て リュウキが視ていた柱へと到達する。すると……、アスナの放った魚たちが ぱっ! と輝き出したかと思えば、その何もいなかったハズの空間に緑色の膜が現れ、たちまち溶け崩れた。

「あっ!」

 ユウキ達は当然ながら驚きを隠せられなかった。ユウキたちからしてみれば、何もなかった空間に、突然プレイヤーが現れたからだ。それも3人。

 視界に捉えたリュウキは、ゆっくりと剣を肩に担ぐ様にし、歩を進めた。

 これは、非常に穏やかではない。周囲にはモンスターの影もない。基本的にボス部屋周辺の回廊ではモンスターが沸く事はない。そんな場所で、隠れ身(ハイド)をする、と言う事は常識的にPKの手口だ。
 ボス戦を前に、入念な打ち合わせのやり取りをしている所に不意打ちをすれば、統制が取れなくなってしまう可能性だってあるから。
 だが、予想に反した答えが返ってきた。

「ストップストップ!! 戦う気はないって!!」

 焦るような声だった。
 アスナとレイナは、多分 リュウキを前にしているからだろうな、と予想は出来た。ユウキやランのコンビの話はここ最近の出来事だし、浸透している、とは言い難い。……だが、リュウキの場合は違う。22層までの攻略でしか目立ってないとはいえ、それまでの実力が半端ではないから。リュウキ(マスターブレイブ)と呼ばれた程の男で、22層を……、あの森の家を目指して頑張る姿は、本当に鬼気迫っていたから。

 ちなみに、リュウキだけじゃなく、キリトは勿論、この場のアスナもレイナも負けてない、とだけ言っておこう。帰るべき家を目指していたから当然だと思えるが。

 と言う訳で、リュウキは歩を止めるも、剣の柄は強く握ったままだった。

「成る程。武器を構えて戦う気がない、か。それは随分と説得力があるな」
「違う、違うって!」
「違うというなら、武器を仕舞って」
「そうだよ。友好的、って
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