暁 〜小説投稿サイト〜
if:dE-ViL
第2話
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
教室では女子の驚きとドン引きのざわざわと、チャラい男子らの大笑いと、僕や僕以上にオタクの連中のざわめきで充満され、教室の外にまで溢れている。他の教室はそこから共鳴するように更に騒めく。

それをもろともしないうちの担任は、ざわめきの中大きく声を上げるでもなしに先ほどと同じ大きさで話を続ける。
「特に学校を舞台とした、いわゆる『学園ファンタジー』と言うのですか?あれには驚きましたよ。なにせ普段の日常のように『魔法』、『超能力』、『武器』などというものが登場するのですから。我々の日常には絶対に登場しないものですしね。」


担任の溝田先生の声は未だに聞こえるざわめきの中でもしっかりと聞こえる。先生の声質なのだろうが、不思議に思えるぐらいきっちりと聞こえていた。


更に先生は続ける。
「ただ、私はあのようなライトノベルに登場する|破廉恥<はれんち>な描写というのを私は嫌っております。皆さんもライトノベルというジャンルの本はそういうものばかりだと思っているのではないでしょうか。実際は違います。確かにそういう描写をする時もありますが、それは作品を十としてみるなら一よりも少ないのですよ。

どんな作品にも伝えたい言葉があり、訴えたい題材があるのです。その題材のない作品は結果的に作者の自己満足に過ぎなくなってしまいます。実際に読んで見てください。第一巻の前書きだけでなく、とりあえずは後書きまで。

そこまで読んでやっと作者が読者に伝えたいことが達成されるのです。そして、先生はこの教室にそれを目的としてライトノベルの第一巻だけを二十作品持ってきました。今は手元にありませんが、今日の帰るときにはそこの棚に置いておきます。」


と溝田先生は黒板を前として一番教室の左前、校庭の見える窓の隣にある棚を目で指す。

「何故第一巻だけかというと、その第一巻を読んだ後あなた方には続きを気になって欲しいのですよ。第二巻を置かないのはそのため、続きからは自身で買って頂きたい。そこから日本が世界に発信した斬新な文化を楽しんで頂ければ社会科の教師としてはいうことはないと思っております。」

先生は一度皆の顔を右から左へと流すように確認してからもう一度口を開けた。
「確信しました。このクラスの生徒、四十一人はこの一学期中に全員がここに置く本を手に取り、最後まで読みきってくれるでしょう。」

そう溝田先生は言う。生徒の反応は少し気の立っている生徒がやや、聞いてもいない生徒が残りの半数を占める。


この反応を第三者のように見ているだけの僕はこの状況に不快感以外を感じなかった。

もう一度周りを見る。朝挨拶したあの子はそのどちらにも属さず、ただ戸惑っているがその周りの生徒は全員笑いしっかりと聞いていない。


担任の挨拶だと言うことを
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ