第三十話 幸せの影その十三
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「厳しいわね」
「日本の皇室って厳しいのね」
「その厳しさも有名よね」
「それが皇室の教育なの」
「我が国のね」
「じゃあ岡島さんも」
「皇室じゃないから」
そこは笑って言った優子だった。
「別にね」
「投げ飛ばされたりしていないのに」
「先輩に怒られたことはあったわ」
そうしたことはというのだ。
「一緒に飲んでいたね」
「変な癖ね」
「私も何度も見てそう思ったわ」
「それに駄洒落も」
「そうした困った癖もあるけれど」
「いい人ね」
「私もそう思うわ」
こう優花に話した。
「実際にね」
「そうよね」
「彼もいて」
そしてと言うのだった。
「貴女は療養所でとてもよくしてもらったのね」
「何の不自由もない位にね」
「それは何よりよ、貴女を療養所に預けてよかったわ」
このことも喜ぶ優子だった。
「本当にね」
「姉さんもそう思うの」
「そのことも不安だったの」
「私がどうなっているのか」
「ええ、岡島君ならってわかっていても」
信頼出来る相手であるがというのだ。
「副所長さん、所長さんのことも知ってたわよ」
「皆いい人達よ」
「そうよね、けれどね」
「不安はあったの」
「一人で大丈夫かしらって」
「そうだったのね」
「ずっとね」
優花が療養所にいる間はというのだ。
「正直に言うとこうして会うまではよ」
「不安だったの」
「ずっと大丈夫かしらって」
「そうだったの」
「優花も不安だったでしょ」
「それはね」
そう言われるととだ、優花も答えた。ここでそのチリンチリンアイスが出て来た。言わずと知れた長崎名物のだ。
「やっていけるかしらって、それに」
「女の子になっていくことに」
この言葉は優花だけに聞こえる様な小声でだ、優子は囁いた。他の客に聞かれない様に細心の注意を払ってだ。
「不安だったのね」
「どうなるのかしらって」
「どうなっていくのか、自分が」
「それでね」
まさにというのだ。
「凄く不安だったわ」
「やっぱりそうよね」
「姉さんもいなかったし」
このこともあってというのだ。
「不安だったわ」
「そうよね、やっぱり」
「けれど皆に支えてもらったの」
「岡島君達に」
「それでやっていけたの」
「そうだったわね、そうよね」
優子は妹の言葉を聞いて頷いた、ここで小さなスプーンを手に取ってチリンチリンアイスを食べはじめた。優花もである。
「優花が一番よね」
「というか姉さんも不安だったのね」
「そうよ」
その通りという返事だった。
「とてもね」
「そして私も」
「お互いに不安だったのね、けれどね」
「私の方がっていうのね」
「より不安だったと思うわ」
まさにというのだ。
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