第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#20
PHANTOM BLOOD NIGHTMARE] 〜Third Impact〜
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内から出てきた彼の手には、
業務用のハンガーにかかったシンプルな服が握られていた。
「え? あの? コレ……?」
突き出された服を反射的に受け取った吉田が疑問を呈すると同時に、
「着とけ、ジャケットみてーなもんだから服の上からでも大丈夫だ。
敵にダメージがあるのを覚られるとマズイ」
と一応の理由をつけ、くるりと背を向ける。
「え? あぁ、そうですね。
わぁ、こんなにボロボロでビショビショ、
恥ずかしくて街中歩けません」
と妙に安穏とした言葉を発しながらいそいそと吉田はその服を纏った。
通気性の良い麻で織られたその服は、
南アジア一帯で着られる “サリー” と呼ばれる民族衣装。
多民族国家であるシンガポールでは比較的ポピュラーな服装であり、
若い女性にも好まれる為デザインも現代風にアレンジされている。
元より躰をすっぽり覆ってしまう形状の為、
制服の上から着ていても特に違和感はない。
色はクリームがかった淡白色で、
微かに覗く若葉色のスカートにはよく見合った。
「面倒かけてすいません。あ、でもコレお金……」
「いーよ。レジに万札ブッ込んできたから多分足りンだろ」
「でも空条君の」
「いいって」
(こんな状況で)細かいヤツだなと想いながら、承太郎は改めて吉田に向き直る。
さて、これからどうしたものか?
合理的に判断するなら5つもの標的を破壊しなければならない為、
彼女と手分けした方が良い。
だが高確率で危険はつきまとうし最悪彼女が敵の人質にでもなれば、
全ての戦局は破綻する。
しかし彼女を護りながらの移動となると当然大きく時間をロスし、
その遅れはシャナの死に直結する。
正直迷ってる時間も惜しい、
自分を信じて待ってくれているアイツの為にも。
逡巡、葛藤、ジレンマ、ソレら全てを抱えて尚、
みえない一手を模索する戦闘の思考。
その数秒すら奪い取る 「魔の手」 が、事態を根底から撃砕した。
「え? わっ!? きゃあ!」
咄嗟の事態だった為スタンドと本体を別個に可動させ、
吉田の膝を抱えて横抱きにしながらもう一つの脚で
路面を蹴り砕き後方へと飛び去る。
上空へと逃れなかったのは対空迎撃を警戒してのコトである。
その音すらも置き去りにする緊急回避の刹那、
力を集束させて穿たれた陥没痕が
その数百倍以上の体積を持つ破壊痕に呑み込まれた。
狂暴な轟音と濛々と立ち込める塵煙。
それらが中心でうっすらと浮かぶ人型のシルエットを映した瞬間、
凄まじい旋風を伴って一挙に吹き飛ばされた。
「――ッ!」
「――ッ!?」
心中に湧く驚愕、その質は違ったが承太郎と吉田は共に声を失った。
俄には信じ難い、倒錯した宗教画のような光景。
近代的な都市の路上
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