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第二十話
第二十話 帰国
日本に帰って来た天本博士と小田切君。だが二人を待っていたのは。
「そこを動くな!」
「手を上げろ!」
歓待などでは勿論なく自衛隊の艦隊が待っていた。
「やっぱりなあ」
それを見て小田切君は呟く。
「こうなると思ってましたよ」
「何、想定の範囲内じゃ」
それでも博士は相変わらず平気な顔をしている。
「自衛隊の歓迎はな」
「やっぱり」
「自衛隊とは警察予備隊からの付き合いじゃ。いや」
「いや!?」
「日本軍だった頃からだったかの。あの時の日本軍は皆立派じゃった」
博士にとって日本軍は互いを認め合うよきライバルだったのである。少なくとも博士はそう認識している。
「って博士お幾つで」
「知りたいか?」
「いえ」
小田切君はその言葉には首を横に振った。なお二人は今カイザージョーの肩の上にいる。
「何か聞いたら気が遠くなりそうなので」
「残念じゃな。わしと皇軍の華麗なる戦いの日々を教えてやれなくて」
「あの日本軍相手でよく生きてましたね」
「はっはっは、あの頃はわしも若くてな」
この博士には皮肉なぞは全く通用しない。全てが賛辞となるのだ。
「何度も死に掛けたものじゃ」
「やっぱり」
「三笠の大砲に撃たれたこともあった」
「日本軍相当頭にきたんですね」
「大したことはしとらん」
「何しでかしたんですか?」
「横須賀の海に大海蛇放っただけじゃ。生体実験でな」
「そりゃ怒りますね」
「三百メートルはあるのをな。船を二隻沈めたぞ」
「帝国海軍のをですか」
本当にとんでもない博士である。
「そうしたらじゃ。三笠が出て来てな」
「それで海蛇はどうなりました?」
「小さくして海に放した」
しれっとして言う。
「まあ若しかしたらまた巨大化しているかも知れんがな」
「そういえば時々聞くシーサーペントって」
「それかもな。まだ生きておるのか」
「で、その腐れ縁が今もですか」
「しかし自衛隊は駄目じゃな」
目の前の海自の大艦隊を前にして言い切る。
「甘い。海軍なら今頃問答無用でゼロ戦が来ておるわ」
一人で帝国海軍に挑むこの博士の狂気や如何に。
「甘いわ。そんなことではわしは倒せん」
「で、どうするんですか?」
小田切君は尋ねる。
「沈めたらそれこそ終わりですよ」
「何、案ずることはない」
いつもの様に胸を張って言う。
「わしに任せろ」
「はあ」
いつもの騒動がはじまろうとしていた。果たして博士は今度は何をしでかすのか。一番迷惑なのは小田切君と自衛隊の人達であった。
第二十話 完
2006・9・25
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