Side Story
少女怪盗と仮面の神父 34
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。
想像も追いつかない人数の『被害者』と『犠牲者』が。
ピッシュや、殺された商人達の他にも、いる。
(神の騎士……国軍が護っているのは、人の世の理。生きていく為の術とそれを糧とするアルスエルナ王国の民。道理を解していないシャムロックが本当に犯した罪は、何?)
『鎧を抜け出た山猫の爪は、『誰』を引っ掻いた?』
一度は呑み込んでしまっていた疑問。
答えは
「私が……私達義賊が犯した罪は、『アルスエルナの民』から仕事を奪い、彼らと彼らの身内が、人として生きる為の環境を、乱したこと……」
いとも容易く。
ミートリッテの口から、するりと溢れ落ちた。
「やや不足だが、まあ正解だ。シャムロックの過ちは、大きく分けて四つ。一つ目は、活動開始前に、義賊が忽然と消えた理由を探らなかったこと。でかい街のド真ん中で起きた売春婦の自殺騒動も、調べようと思えば簡単に調べられた筈だ。耳に優しい話ばっかり受け入れるから、重大な判断要素を聴き逃す羽目になるんだよ」
「…………っ」
「二つ目は、出現した時期と方法。やっと義賊が消えたかって時に、正体が見えない不気味な消失現象を目の当たりにしてみろ。焦った貴族達が警戒を強めるのは、至極『当然』の結果だ」
おかげでここ数年、南方領全土の防衛費が急上昇。
傭兵への緊急報酬を含めた不足分は各種予算で補填してるから、領主達は今後も税を上げたがると考えて間違いない。
一方で、国民や領民にとっては、出世を望める場所や機会や収入が減り、国内の潜在的戦力と各職の質、当然、経済も緩やかに下降の一途だ。
「さすがにこれは国の衰退が始まる予兆めいてて、王家にとってもすんごい迷惑なワケ」
「税金は……私腹を肥やす為に上げてるんじゃ」
「そういうバカが一人も居ないとは言わんがな。本気でンなことしてたら、国としての機能はとっくに瓦解しとる。誰かの又聞きだの外面の印象だのを信じてるんだろうが、誰の目にも明らかで確かな証拠が手元に無いんなら、そいつは願望やら妄想やらと変わらない。そんな不確かなモンを根拠にした空虚な批判なんぞ軽々しく口にするな。それは他国が我が国に付け入る隙を無防備に見せびらかしてるも同然の愚行だ。誠実な試行錯誤の成果が最善に見えるとは限らない、とだけ覚えておけ」
「……頑張っても、どうにもならない時だってある?」
「似たようなもんだ。そこから来て三つ目。王候貴族もアルスエルナ王国を形作る民の一部で、国内の人材や資源は有限であると気付けなかったこと。生活を改善したいと思っているのは南方領民だけじゃない。お前達を優先に助け舟を出せば、違う場所からも不平不満が飛び出す。その要望のすべてに応えられる力なんぞ、一
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