Side Story
少女怪盗と仮面の神父 34
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
どうかあなたも、温かな幸せに包まれますように……
「教えてください、殿下。貴方は御存知なのでしょう? アルフィンの実の母親である女性が、元々どこで、何をしていたのか」
濡れた瞳で正面の男性を見据える。
彼はゆっくりと目蓋を閉じ……一拍置いて、開いた。
「南方領東北部のシアルーン男爵家三女ウェミア=シアルーンは、同東北部子爵領の領主、マルペール子爵に仕える侍女の一人……だった。十三年前、ブルーローズが子爵の私財を盗んだその数日後に解雇処分を受け、更に後日とある豪商と政略結婚をしたが、三ヶ月と保たずに別居。十ヶ月を待たずに離婚が成立して以降、十一年前に自殺騒動を引き起こすまで、彼女がどこで何をしていたのかは、改めて詳細を話す必要を感じない」
三ヶ月。
個体差はあれど、人が人を宿したと気付くのは、大体その頃だろう。
つまり、アルフィンは…………
「…………ふ……、ふふ……っ……」
腹の底からふつふつと何かが沸いてくる、奇妙な感覚。
それは少しずつ体内を這い上がり、抑えようとする喉を震わせ。
ミートリッテの唇を笑みの形に歪ませた。
ああ……これには最近、すごく馴染みがある。
自分への 嘲笑 だ。
「あっはははははははははは! 何が幸せに……よ! バっカバカしい! 他でもない、私自身が! 私と同じ人間を作り出してたんじゃない??」
気付いてみれば、逆に何を悩んでいたのか疑問に思える『当然』の罪。
盗む者がいれば、盗まれる者がいる。
盗まれたくない者は、盗みを邪魔する者に頼る。
では、盗みを邪魔する者が、盗む者を阻めなければ?
求められた役目を果たせなければ?
『役立たずは、捨てられる』
軍事に関わる人間が誰かに雇われる際、最も重視されるのは『実績』だ。
たった一人の怪盗すら捕まえられない実力など、雇用する側にとっても、雇用される側にとっても、汚点でしかない。
経歴のどこかで付いた傷は、確実に腕を鈍らせる。
保身に重きを置く権力者達の中で、鈍った剣を求めるような変わり者が、果たしてどれだけいるのやら。
だから解雇された経歴の持ち主は、軍事世界への帰還が難しいのだ。
なんの後ろ盾も柵も無く、他と比べて切り捨てが容易な、一般上がりの騎士や兵士なら、尚更。
そして、屋敷を任されている点で言えば。
錠の役目を担うのは、軍事関係者だけじゃない。
執事や、侍女や、庭師や、御者や……気分次第で自由に切り捨てられる、
乱暴に放り出されても文句は言えない立場の人間と、その家族が。
いったいどれほど存在しているのか。想像もつかない
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ