Side Story
少女怪盗と仮面の神父 34
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
業員達の手を借り。
胎児が産まれるまで、つきっきりで監視していたそうだ。
なんとか無事に出産を終えた後、時間を掛けて少しずつ親子の情を育ててあげられれば……との、行商人の願いは叶わず。
女性は、自らが産んだ赤子を、汚物かおぞましい何かを見る目で拒絶。
声を聞くことさえ、胃の内容物を残さず全部吐き出すほど嫌悪した。
いや。産まれて間もない赤子に向かって、気が狂ったように存在の消滅を強いる呪詞を喚き散らす様はもう、憎悪と表現するべきかも知れない。
この母子を無理矢理一緒に居させても、待っているのは悲惨な最後だ。
行商人は、犯罪行為になると解っていながら、女性に銀貨数枚を渡し。
半ば強引に赤子を引き取った。
やがて床上げした女性は、与えられた数枚の衣服とわずかな食料とお金を持って行商人の元を去り。
行商人に連れられて宿を出た赤子は、以前から取引を通じて親交があったグレンデルの家に託される。
しかし、グレンデルの妻ティルティアは、赤子を託されるその数ヵ月前、遠海組が漁へ出ている間に深夜の自宅で階段を踏み外し、助けが遅れた為に流産してしまったばかり。
深い喪失感と罪悪感に苛まれた不安定な精神状態で、他所から来た子供を受け入れられるのか? と、周囲は心配したものだが。
彼女は、グレンデルと二人で一緒に考えてアルフィンと名付けた赤子を、一寸の偽りもなく心の底から愛し、大切に護り育てていた。
ハウィスさんは、四年前に南方領内にある遠くの街でアルフィンの生母と顔を合わせていた。それに気付いたのは、ネアウィック村に引っ越してきてアルフィンと出会ったからだと話してくれた。
(たくさんの男の人に、体を売った……)
娼婦や売女といった、直接的な言葉こそ使わなかったけど。
ハウィスさんの説明は、すんなり理解できた。
何故なら
(あの子は、私と同じ……なんだ……)
両親と死別するまで住んでいたバーデルの町の住人達が。
お前の母親は、戦地で父親と出会って身受けされるまで、たくさんの男に体を売ってたんだぞ……と。
尋いてもいない両親の過去を、言い逃れができない証人まで引き連れて、事細かに教えてくれていたから。
「……仲良く、なれるかな?」
繋がれてるハウィスさんの手がぴくりと震えた。
覗き込んでくる群青色の目が丸いのは多分、驚きのせいだ。
お母さんと同じ類いの肉親を持つ人間が周りにどんな目で見られるかは、身をもって知っている。
(ハウィスさんも、近寄っちゃダメって、言うのかな)
私の母もそうでしたと言ったら。
この手を振り払って、気持ち悪いと罵倒するのだろうか。
わざと足を引っ掛けて転ばしたり、肩
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ