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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十九話 フェザーン進駐
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だが」
トリューニヒトの言葉に皆が視線をボロディン本部長に向けた。
「ヤン提督とですか」
「そうだ」
「……分かりました。少しお待ちください」

暫くしてスクリーンにヤン提督が映った。黒髪、黒目、ごく平凡な若者と言って良い。特別なところなど何処にも無い若者だ。何処と無く表情が暗いのはフェザーン方面の状況を理解しているからだろう。

「ヤン提督、フェザーンの状況は理解しているかね?」
『はい、長老会議は未だ開かれていないと聞いています』
「うむ。提督はこれをどう思うかね?」

『申し訳ありません、どうやら私の考えた案は失敗だったようです』
ヤン提督が軽く頭を下げ謝罪した。
「失敗では済まんのだよ、ヤン提督」
吐き捨てるように言ってヤン提督を睨むネグロポンティをトリューニヒトが遮った。

「止めたまえ、ネグロポンティ君」
「しかし、議長」
「止めるんだ。たとえ誰の提案であれ最終的に受け入れたのは私だ。それにヤン提督と連絡を取ったのは話をするためだ。彼を責めるためじゃない」

ボロディン本部長、ビュコック司令長官、グリーンヒル総参謀長がそれぞれの表情で顔を見合わせるのが見えた。驚き、感心はあっても不快感は無い。ヤン提督の顔にも意外に思う表情がある。

「ヤン提督、フェザーンは何故長老会議を開かないのだろう、提督の考えを聞きたい」
ヤン提督は少し間をおいてから話し始めた。

『フェザーンは今、自由、独立を失いかねない危険な状態に有ります』
「うむ」
『にも関わらず、長老会議を開こうとしない』
「そうだ」

『可能性は二つです。長老会議は危機を認識していないか、危機を認識した上で放置しているか……。フェザーンの有力者には何人ぐらい知らせたのです』
ヤン提督の問いにトリューニヒトが私を見た。

「大体三十人ぐらいだろう。長老会議のメンバーも十人程度は居たはずだ」
『彼らの感触は如何です、レベロ委員長』
「かなり慌てていた。ルビンスキーの罷免に賛成したし、他の有力者にも相談すると言っていた。あれなら直ぐ長老会議が開かれると思ったのだが……」

『だとすると長老会議は危機を認識した上で放置している、そういうことになります』
「つまり、彼らにとってはフェザーンの独立、自由は必要不可欠なものでは無い、そういうことか……」

トリューニヒトの言葉に皆の視線が彼に集中した。トリューニヒトはそれに気づく事も無くさらに言葉を続ける。
「ありえん事だ。これまでフェザーンは独立を守るために躍起になっていた。この時点でそれを捨てるなど、どういう事だ……」

『何か別な力が動いたと言う事でしょう。長老会議を抑えるだけの力を持った何かがです』
執務室の皆が互いに顔を見合わせた。顔には皆不安感がある。自分も得
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