第三十話 幸せの影その十二
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「もっと、遥かに大きなものがあるのよ」
「その大きなものは」
「今は絆ね」
それだというのだ。
「私達のね」
「それがあるから」
「私達は今とても嬉しいのよ」
優子自身も優花もというのだ。
「心からね」
「だから気持ちも上向いていて」
「食欲もあるの」
そうだというのだ。
「そうだと思うわ」
「じゃあ今はもう一杯食べていいかしら」
「好きなだけ食べていいわ」
優しい笑顔でだ、優子は優花に答えた。
「だからね」
「もう一杯おかわりね」
「貴女もそうすればいいわ」
「それじゃあ」
優花は姉の言葉ににこりと頷いてだった、そうして彼女と同じくおかわりをした。そしてそのおかわりのトルコライスも食べてだった。
そうしてだ、その二杯目を奇麗に食べてから笑顔で言った。
「美味しかったわ」
「ぺろりだったわね」
「本当に美味しかったから」
姉ににこりとした笑顔で答えた。
「だからね」
「やっぱり気持ちが上向いてるわね」
「そうなのね」
「ええ、いいことよ」
「実は身体が変わる間はこんな調子だったの」
食べる量についてもだ、優花は姉に話した。
「幾ら食べてもって感じで」
「それは身体の構造が変わっていって新陳代謝が凄かったからよ」
だからだったのね」
「食欲もあったのよ」
「男の子だった時よりも」
「それがいいとね」
新陳代謝、それがというのだ。
「やっぱり食欲が出るのよ」
「身体を作る為に」
「そうなの」
「そのこと副所長さんや岡島さんにも言われたわ」
「そうそう、岡島君療養所にいるのよね今は」
「とてもいい人よ」
「ええ、彼はいい人よ」
岡島についてもだ、優子は笑顔で答えた。
「気配りが出来てね」
「そうよね」
「スマートでね、滅多にいない位いい人よ」
「あれで酔って変な駄洒落を言ったり誰彼なしに相撲を取ろうという癖がなかったら」
「お相撲?」
「彼は何故か酔うとね」
その時はとだ、優子はデザートのチリンチリンアイスを待ちつつ優花に話した。
「それをしたがるのよ」
「変な癖ね」
「そう、変な癖だからね」
それ故にというのだ。
「そこが困ったところなのよ」
「明治帝みたいね」
「あの方も酔うとお相撲を、ってなったらしいわね」
「そう聞いたけれど」
「それで侍従長の人に投げ飛ばされたらしいわね」
このことは稽古中だったという説もある、他には落馬をされて痛い、と言われたがその場にいてお供をしていた西郷隆盛に君主たるもの痛いと申されるなと一喝されたこともある。
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