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天本博士の怪奇な生活
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第十五話

             第十五話  御意見無用の大脱獄
 各国のSPに拘束された博士と小田切君。南極の昭和基地に放り込まれることになった。
「全く何でこんなところに」
 実は各国が引き取るのが嫌で日本に押し付けて対処に困った日本政府が博士をここに禁固することにしたのである。何処までも厄介者扱いされている博士であった。
「どうしましょう、博士」
「何、わしは困らんぞ」
 博士は南極にあっても平気な顔をしていた。
「何でですか?」
「こんなところ何時でも脱出出来るからじゃ」
 博士は何の臆面もなく答える。
「ここ南極ですよ」
「それがどうした?」
「しかも何か特別に作られた牢獄に入れられて。どうするんですか」
 二人は何重にも設けられたやけに厳重な牢獄の中に監禁さえていたのである。食事は小さな穴から入れられる。どう考えても脱出なぞできはしない。殆どエリザベート=バートリーの扱いである。
「この程度で何を言っておるか」
「この程度って」
「だから安心しておれ」
 博士は言う。
「今から日本に帰るからな」
「どうやってですか?」
「決まっておろう」
「まさか」
「脱獄じゃ」
「やっぱり・・・・・・」
 相変わらず法律なぞ全く意に介さない博士であった。
「で、どうやって脱獄するんですか?」
「ロボットを呼ぶ」
「ロボットって」
「闇の中見つめてる!」
「博士、それってロボットじゃないですよ」
「君のままで変わればいい!」
 博士は何か訳のわからないことを言いはじめた。
「カムヒアーーーーーーーッ!ファイナル勇者王フューーーーージョン!」
 それで出したのは怪しげな携帯電話であった。もう何が何かわからない。
「スイッチオン!」
 そのスイッチを押すと何か得体の知れない物音が聴こえてくる。とんでもないことが起ころうとしていることだけは小田切君にもわかった。
「一体何が・・・・・・」
「さあ来い伝説の巨神よ!」
「宇宙とか大丈夫かな」
「我を救うのだ!」
 基地が凄まじい衝撃に襲われる。何かが派手に壊れる音がする。
「まさか・・・・・・」
「小田切君もうすぐじゃぞ」
「もうすぐって」
 博士はその衝撃と破壊音を聴きながら満足そうに笑っていた。
「日本に帰れるぞ」
「その前に巻き添え食らいそうですけど」
 小田切君は衝撃にあちこち揺れながら言う。遂に神が現われようとしていた。


第十五話   完


                  2006・9・6




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