第三十話 幸せの影その七
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「だから今日はね」
「そうしたところに行くのね」
「そうしましょう」
「原爆資料館とかは」
「いいわ、前に行ったから」
そうした場所についてはだ、優子はやや遠い目になって行かないと答えた。
「いいわ」
「そうなの」
「ええ、何か最近ね」
「最近?」
「というか前から長崎とか広島っていうと原爆って人いるわね」
「確かにね」
「そうした風潮は好きじゃない」
原爆にこだわるそうしたものがというのだ。
「だからね」
「行かないのね」
「そうするわ」
こう優花に答えた。
「だからね」
「他の場所に行くのね」
「そうするわ」
こう言うのだった。
「今回は」
「わかったわ、じゃあね」
「眼鏡橋とか行きましょう」
「あそこもね」
これから行く眼鏡橋についてだ、優花はこうしたことを言った。
「奇麗というかハイカラというか」
「そうした場所よね」
「あそこにはもう行ったわ」
「流石ね、長崎にいるだけはあるわね」
「ええ、長崎にいたらね」
折角今はこの街にいるのだ、それならばというのだ。
「そうした場所は一通り見ておきたいって思って」
「巡ったのね」
「そう、全部ね」
そうしたというのだ。
「私達はね」
「そうしたの」
「そう、そしてね」
そのうえでというのだ。
「他の場所も巡ったの」
「そうしたのね」
「じゃあ案内するわね」
「ええ、お願いするわね」
「姉さんと一緒に長崎の街を巡りたかったわ」
優花はにこりと笑ってだ、遠い目も見せた。笑みでのそれだった。
「それで実現して嬉しいわ」
「そうなのね」
「ええ、長崎に来た時からこの日を待ってたから」
「待ち遠しかったのかしら」
「とてもね」
優花に顔を向けて答えた。
「そうだったわ」
「そうだったのね、私もね」
「姉さんもだったの」
「ずっと会いたかったわ」
「姉さんもだったの」
「それが適って嬉しいわ、ただ」
「私高校を卒業したら」
その時のこともだ、優花は優子に話した。
「神戸に戻るから」
「その時も待っているわね」
「そうしておいてくれたら嬉しいわ」
「待たない筈ないわ」
優子は優花に顔を向けて笑って告げた、長崎の街の中で。
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