第十二幕その十二
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「誰かいい人が絶対にいるのに」
「ここでいないって言うと」
「そうよ、違うから」
だからだというのです。
「兄さんが気付いていないだけよ」
「そうかな」
「そうよ、いつも言ってるけれど」
それこそというのです。
「日本に来た時も電話でもね」
「それはその通りだね」
「そうよ、何で恋愛小説も読むのに自分のことには駄目なのかしら」
「縁がないとわかってるからだよ、僕自身にはね」
「わかっていることと思い込みは違うわよ」
サラはこう注意しました。
「そのこともわかってね」
「厳しいね、今日も」
「厳しくしてるのよ」
「やれやれだよ。けれどね」
「けれど?」
「今回いきなり来たけれどどうしたのかな」
「またお仕事で来たのよ」
あっさりとです、サラは先生に答えました。
「主人の付き添いでね」
「それはいつも通りだね」
「そうよ、そんな遊びで来るなんてね」
「いつもそうして来日はね」
「出来る筈ないじゃない」
サラも忙しいのです。
「主人のお仕事のことがあるからよ」
「今回もだね」
「来日してね」
そしてというのです。
「これまたいつも通りね」
「僕のところに来てくれたんだね」
「そうよ、そうしたら兄さん達がお相撲観てたのよ」
「そういうことだね」
「こうして観ると日本独自で」
文化的にというのです。
「面白いわね」
「そう、実際に面白いよ」
「そして兄さんが監督をしていたのね」
「相撲部屋じゃないけれどね」
大学の部活でのことというのです。
「そうしていたよ」
「そうよね」
「また機会があれば監督をしてみたいね」
「いいと思うわ、本当に日本に来てね」
サラは結婚のことには口を尖らせていましたが先生のこのことについては自然な笑顔になって言いました。
「兄さんは凄く幸せになったわね」
「イギリスにいた時も幸せだったと」
「あの時以上に幸せになったわ」
「そういうことなんだね」
「そうよ、じゃあもっと幸せになってね」
「ははは、サラもそう言うんだね」
「幸せは限りがないから」
微笑んだまま先生に言うのでした。
「兄さんはもっともっと幸せになっていいのよ」
こう言ってサラもお相撲を観るのでした。今は皆でお相撲の観戦を楽しむのでした。
ドリトル先生の名監督 完
2016・5・12
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