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天本博士の怪奇な生活
14部分:第十三話

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第十三話

              第十三話   結果が全て
 かくして博士からとんでもない薬を貰った少年だが。結果は意外なものであった。
「博士、有り難うございます!」
 彼はわざわざ研究所に来て博士に礼を述べたのだ。
「おかげで彼女と一緒になれました!今凄く幸せです!」
「そうじゃろそうじゃろ」
 博士はその言葉を聞きながら上機嫌に笑っていた。
「わしに不可能はないからのう」
「全くです。本当に有り難うございます」
「まさか」
 だがそれを信じられない者がいた。当然小田切君である。
「あの薬でどうしてハッピーエンドになるんだ」
「あの薬で僕ものを彫ったり掘ったりするのが凄く上手くなったんです」
「うん」
 そういう薬だからだ。それでも惚れ薬ではないというのに。
「けれどそれでどうやって」
「図工の時間や皆で何かする時にそれで凄く目立って」
「それで?」
「それで彼女が振り向いてくれて。それで一緒になれたんですよ」
「まさかそんなことが」
 とても信じられない話であった。
「嘘みたいだ」
「嘘ではないぞ」
 そんな小田切君に博士は胸を張って言う。
「これがわしの薬の効果じゃ」
「はあ」
「人はのう、格好よいところや可愛いところに惚れるものなのじゃ」
「まあそうですね」
 その言葉だけは信じられるものであった。
「じゃから彼女もそういうことじゃ」
「仕事や図工の時の姿を見て格好いいと」
「うむ」
 博士は自信満々で頷いた。
「どうじゃ、上手くいったじゃろう」
「嘘みたいですね」
 かといってそうですね、と笑顔で頷く気にはとてもなれなかった。
「こんなので上手くいくなんて」
「それも全てわしが天才だからじゃ」
「だから字が違いますよね」
「ふふふ、天才は天才としか書けんぞ」
「そう仰るのならいいですけれど」
 こんなことではいそうですかと言う博士でもない。言うような人間がどうしてマッドサイエンティストになれるだろうか。いや、なれはしない。
「何事も結果が全てじゃ」
「結果が出なかったらどうするんですか?」
「結果が出るまでやるだけじゃ」
 これが博士の持論である。だから彼に失敗は絶対にないのだ。
「わかったかな」
「ええ、よおくね」
 何はともあれ少年は好きな女の子を彼女にできた。博士の薬のおかげで。これは紛れもない事実だったのである。だからよかったのだ。


第十三話   完


                    2006・8・29



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