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第十一話
第十一話 薬の開発
博士は早速薬の開発に取り掛かった。小田切君と二人地下深くの研究室に篭もることとなった。
「で、博士」
小田切君はせっせと色々なものを出している博士に尋ねた。
「何じゃ?」
「ほれ薬、どうやって作るんですか?」
「あんなものは簡単じゃ」
博士はしれっとした様子で述べた。
「材料もある。すぐに作られる」
「すぐにって。本当ですか?」
「うむ、じゃから心配することはない」
「だといいですけど」
だがこの博士が心配無用と自称して大事にならなかったことはないのだ。どうせ今回もそうだろうというのが小田切君の予想であった。
「その薬劇薬じゃありませんよね」
「安心せい、漢方薬じゃ」
「漢方薬もできるんですか?」
「甘いな、わしは万能の天才じゃぞ」
ヤツメウナギやイモリの干物、蝮酒等を持って小田切君に答える。
「漢方医学もマスターしておるわ」
「初耳ですよ」
「他には道教の方術もマスターしておる。漢方医学も色々と使えるのじゃ」
「使い方が問題なんですけど」
「天才の研究には犠牲がつきものだといつも言っておろうが」
「今度はあの男の子犠牲にするなんてことはないでしょうね」
「安心せい、それはない」
いつもこう言い切って惨事を起こす。
「だから君はここでわしの新たな偉業を見守るのじゃ。よいな」
「はいはい」
今度は朝鮮人参にスッポンのエキスだ。それに椎茸や大蒜まで出している。ちょっとまともなものには見えない。だが博士が何かを作っているのは確かであった。
「後はこれを」
「それ何ですか?」
「これが重要なのじゃ」
決して今入れたのが何か言うことはない。
「もうすぐで完成するからな」
何時の間にか巨大な鍋の中で不気味な深緑の液体が沸騰していた。そこに動物の骨が入って瞬く間に消えていく。ほれ薬でも漢方医学でもなく魔女の怪しげな毒の研究にしか見えない。
暫くして。遂に完成した。
「よし」
「もうできたんですか」
時計を見れば三時間程だ。とても薬の開発時間とは思えない。
「頭の中にデータがあるからのう」
「それでも早いですね」
「天才は一つ一つの開発に時間をかけぬ」
これは博士の持論である。
「で、これじゃ」
「それですか」
見れば奇麗な緑の丸薬であった。あの不気味な色は何処にもない。
「これを飲めばよいのじゃ」
「だといいですけれど」
それでも不安を隠せない小田切君だった。これから起こる惨事は何か、それだけを心配していた。
第十一話 完
2006・8・23
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