第三章 エリュシオンの織姫
第8話 青空になるまで
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たのだから。
(……そうか、そうだったんだ。お父さんが、大丈夫だって言ったのは……こういうことだったんだ……)
父から受けた励ましの言葉。絶対に大丈夫だと言い切って見せた、彼の発言の意味を、遥花はここに来てようやく悟る。
――警察は、仮面ライダーとの協力に成功していたのだ。だから、父は仮面ライダーをここに連れて来れた。
だから、父は――大丈夫だと、言い切ったのだと。
「よかっ、た……これ、で……みんな……」
「あっ!? ちょ、ちょっと! ねぇ!」
その「答え」に、辿り着いた時。
ようやく手にした安心感から緊張の糸が途切れてしまい、遥花は変身を解き――意識を手放してしまう。改造人間としての適性こそ過去最高ではあるものの、14歳の女子中学生の体では、変身を維持するだけでもかなりの体力を消耗してしまうのだ。
力無く倒れこんで行く遥花。その小さな体に、周りの被験者達は慌てて手を伸ばすが――その細い肩を抱き止めたのは、彼らではなかった。
「あっ……!?」
「――御息女の身柄を保護。生存者、他に発見できず。これで……全員かと」
『わかった。……生存者の、救出を頼む』
「了解、しました」
突如現れ、気を失った遥花を受け止めた金髪の美男子。その人物が通信で連絡していた相手は安堵のため息を漏らし、彼に次の指示を送っていた。
美男子こと、ロビン・アーヴィングの頭上には――火の海を吹き飛ばすように猛風を巻き起こし、この施設跡に近づいているヘリが舞っている。
そこから吊るされたロープを伝い、救助隊員が生き延びた被験者を次々と回収している。「施設の警護」は禁じられているが、「火災現場からの救助」はその限りではない。
詭弁に過ぎないが、通信先からロビンに指示を送る番場惣太にとっては、それで十分だった。
やがて全ての被験者を救出し、ヘリは最後にロープを掴んだロビンを吊るしながら、遥か上空へ舞い上がって行く。
「……南雲君。アウラ様の願いは、君を在るべき『姿』に還すことにある。だから……必ず、生きて帰って来るんだ。君が愛した、織姫のために」
片手一本でロープに捕まりながら。ロビンは見下ろす先の火の海で、剣戟を続ける仮面ライダーに慈しむような眼差しを送る。
妹を救ってくれたアウラ。そんな彼女を地球に繋ぎ止めてくるた南雲サダト。
彼らに何一つ報いることが出来ない苦しみの中で。
ロビンはせめて、祈る。彼らにとって少しでも、望ましい未来が訪れることを。
(サダト様……過ちに塗れた私でも、どうか、あなたの幸せだけは……)
そんな彼を運ぶ、ヘリの中で。か細く白い指を絡ませるアウラもまた、愛する男への祈りを捧げていた。
数え切れぬ上、取り返しもつか
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