第三章 エリュシオンの織姫
第8話 青空になるまで
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はち切れんばかりの筋肉で膨張しているその手には、一振りの日本刀が握られており――刀の?には、「改進刀」とう銘が彫られていた。
――これが、シェード最古の改造人間。最後に残った「怪人」、羽柴柳司郎の真の姿。
「仮面ライダー羽々斬」だ。
『AP-GX! GO FOR THE TRUTH KAMEN RIDER!!』
『雲起竜驤。羽々斬、推参』
やがて。軽快な電子音声と呪詛の囁きが同時に、変身シークエンスの完了を告げる。
仮面ライダーAP-GXと、仮面ライダー羽々斬。南雲サダトと、羽柴柳司郎。
この戦場に立つ、二人の剣士の果し合いが始まった。
◆
――2016年12月12日。
東京都稲城市風田改造被験者保護施設跡。
廃墟同然と化した同施設を飲み込む、災禍の炎。その渦中を脱するべく、ライダーマンG――番場遥花。
彼女は地獄の淵の中で「生」を捨て切れない同胞達を引き連れ、施設の壁をパワーアームで破りながら脱出を目指していた。
「だ、だめ……もう、だめよ……!」
「諦めないで! 私も絶対、諦めない……からっ!」
何度も諦めかけた。死んだ方がずっと楽だとは、誰もがわかっていた。
だが、その合理性を以てしても。生存本能という人間の――生物の遺伝子に刻まれた欲求を、阻むには至らず。
助かる保証などないと知りながら、その足を進ませていた。
そのあまりにしぶとい生物としての在り方が、功を奏したのか。遥花の一撃に最後の壁が破られる瞬間まで、最後の生き残りから脱落者が出ることはなく。
「――だあぁあぁあっ!」
遥花が「変身」と引き換えに救った命は、施設の外へと解放されていくのだった。
瓦礫と黒煙を突き抜けた先に広がる、火の海。だがそこは紛れもない、施設という檻の外であった。
「た、助かったの……? 私達……」
「……あ、あれ……!」
だが、全てが終わったわけではない。
間一髪、崩れゆく施設から脱出した彼らの目には――火に囲まれた庭園の中で剣を交える、仮面の剣士達が映されていた。
遠巻きにその一戦を目撃した彼らは、揃って息を飲む。
鬼気迫る殺気を互いに迸らせ、切り結ぶ二人の剣士。火がなかったとしても、決して近寄れない圧倒的な迫力が、その空間から放たれているようだった。
「……仮面、ライダー……」
その剣士達のうちの、一人。仮面ライダーAPの姿を、遥花はよく知っていた。シルエットこそ少し違うが、人々のために振るわれてきたその太刀筋を、見間違うことはない。
彼女自身、彼に救われ、ほのかな憧れを抱き続けてき
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