第三章 エリュシオンの織姫
第7話 覚悟と銃声
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◆
――2016年12月12日。
東京都稲城市山中。
木々をなぎ倒し、矢継ぎ早に主砲を放つタイガーサイクロン号。その猛攻を、並走するアメノカガミノフネは絶妙にかわし続けていた。
その真紅の車体は絶えず重戦車の巨体に、体当たりを繰り返している。九五式小型乗用車でタイガー戦車を相手にカーチェイスを仕掛けるなど、本来なら自殺行為以外の何物でもない。
……が、その車体に詰められた圧倒的質量は、タイガーサイクロン号の超弩級の体格にも屈しないほどのパワーを秘めている。
南雲サダトが異世界で獲得した「大和級の艤装」の質量は、この世界の地球上に存在するあらゆる物質に勝る超重量を誇っているのだ。
主砲の破壊力に対して、「7.7mm機銃」の威力はあまりに頼りない。しかし、アメノカガミノフネによる体当たりは、確実にタイガーサイクロン号を仰け反らせていた。
機銃による車体へのダメージは軽微であるが、砲撃を掻い潜りながらしきりに繰り返してきた体当たりの成果は、ひしゃげた装甲に大きく顕れていた。
『ク……フフ。まさか、そんな小さな車にそれほどのパワーがあったとはな。機銃だけなら何とでもなっただろうが……』
「死にたくなければ戦車を捨てろ!」
『生憎だが、年寄りに死を迫っても脅しにはならんよ。お前に殺されるのは構わんが――それは不要なガラクタを処分してからだ』
「ガラクタだとッ……! それを創り出したヤブ医者風情が、よく云うッ!」
サダトの怒声に怯む気配もなく、羽柴はさらにタイガーサイクロン号を加速させていく。まるで、彼を振り切ろうとするかのように。
急加速で僅かに間合いを離した瞬間。
後を追うべくアクセルを踏み込もうとしたサダト目掛けて、砲身が後方へ旋回していく。
「……!」
『悪いが、先に行く。俺が憎いなら、口先よりもその御立派な機銃で語ることだな』
咄嗟にハンドルを切り、軌道を逸らしたサダトの側を、砲弾が轟音を上げて横切った。その風圧で、白マフラーが激しく揺らめく。
タイガーサイクロン号はその砲撃による反動さえ利用し、さらに加速していく。
一方、回避行動により僅かにスピードを殺されたサダトは、焦りと共にアクセルをフルスロットルまで踏み込んだ。
「くそッ! 俺を殺すより、施設のみんなを殺す方が優先なのか!?」
サダトとしては羽柴を挑発し、注意をこちらに引き付けることが狙いだった。しかし当の羽柴は誘いに乗らないばかりか、逃げるように施設目掛けて爆走している。
邪魔者の排除より、殺戮を優先しているようだった。仮面ライダーを後回しにしてまで施設の破壊に拘る真意は読めないが、いずれにせよ彼の野望を達成させるわけにはいかない。
サダトも全力でアメノカガミノフ
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