第三章 エリュシオンの織姫
第7話 覚悟と銃声
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(……右腕の「力」だけなら、まだしも。この「力」にまで、頼るのは絶対に嫌だった。この異形が、お母さんから貰った体から……遠のいて行くのを感じてしまうから)
左手に抱えたマスクと正面から向き合い、彼女は自分が目を背けてきた「異形の証」と対峙する。
亡き母から貰った体が、悪の手で異形に変えられたこと。
その事実を右腕以上に強く思い知らせる、この仮面は――遥花にとって何よりも直視し難い「もう一人の自分」だった。
(でも……これ以上、何も悪くない人達が死んでいくなんて……絶対に許せない! 許してお父さん、みんなのためにっ!)
だが、それ以上に。
自分と同じ境遇に思い悩む人々が、絶望のまま死んでいくことの方が。そんな彼らに、何一つできないことの方が。
彼女にとっての、耐え難い生き地獄なのだ。
少女は勇ましく目元を釣り上げ、表情を引き締める。やがてその覚悟の赴くまま、マスクを被るのだった。
――禁忌の力。その境地のさらに向こう側へ、「変身」するために。
刹那。
マスクを中心に閃く紅い光が、少女の肢体を包み込み――全身にぴっちりと密着した黒の外骨格へと変貌していく。
豊満な胸により内側から押し上げられている「G」の形を描いたプロテクターや、複眼を囲う同じ形状の意匠は、仮面ライダーGと酷似した外見となっていた。
ただ、全ての外見がGと一致しているわけではない。
歳不相応に発育した双丘を含む、彼女の女性らしいプロポーションを露わにしたボディスーツ。頭部を含む体の大部分を、その外骨格や仮面で覆い隠している一方で、ただ一つ露出している口元が、人間としての「番場遥花」を証明しているようだった。
黒のスーツとは対照的な、口元から窺える雪のように白い肌と薄い桜色の唇が、一際「人間」らしい美貌を強調している。
そんな「改造人間」と「人間」の狭間を彷徨う少女は――仮面の戦士としての「もう一つの名」を、シェードから与えられていた。
「みんな、待ってて! もう誰も……誰も死なせないからっ!」
だが、当の少女はその名を知らない。彼女はあくまで、ただの番場遥花として。この戦場に立ち上がるのだった。
「変身」を終えた遥花は素早く病室を飛び出すと、生き残った被験者のそばへと駆け付ける。
そして、彼らの頭上に迫る瓦礫を、ハサミのような形状に変形した右腕――「パワーアーム」で、粉々に打ち砕くのだった。
「……! あ、ぁあ……!」
「みんな、遅れてごめん。仮面ライダーのようにはいかないけど……それでも、みんなは私が守るからっ!」
――番場遥花はこのマスクを付けることによって「ライダーマンG」となり、手術した腕が電動しアタッチメントを操ることができるのである。
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