第三章 エリュシオンの織姫
第6話 過ち
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――2016年12月11日。
警視庁警視総監室。
日本警察の中枢であるこの一室には、四人の男女が同席している。
警視総監番場惣太。ICPO捜査官ロビン・アーヴィング。異星人の姫君アウラ・アムール・エリュシオン。
――そして、仮面ライダーAPこと南雲サダト。
シェード最後の一人・羽柴柳司郎の虐殺を巡る問題の対処のため、彼らは一堂に会して顔を付き合わせていた。
「……そうか。そうだったんだな」
「サダト様……」
そのためにはまず、情報の共有が優先される。ロビンの口からアウラが置かれていた状況や、改造被験者を巡る社会問題の暗部を聞かされ、サダトは脱力したようにソファに座り込んでいた。
そんな彼の姿に、再会した喜びを噛み締めることさえ叶わず、アウラも胸を痛めていた。そばに寄り添い、慰めたいというのが本音であったが、自分が撒いた災厄のことを思うと、罪悪感から踏み出せない。
己の罪の重さゆえ、何もできず立ち往生していた彼女を横目に見やりながら、ロビンはこの空気を打破するべく言葉を切り出して行く。
「実行したテロの内容から見て、次に狙われる対象が風田改造被験者保護施設であることは明白。君も防衛のため駆けつけて来るに違いない、と網を張っていたのが功を奏したということだ。策を練ってくれた捜査一課の泊巡査部長には感謝しなくてはな」
「……警察は、あの男……羽柴柳司郎に対処するつもりはないんですか? ロビンさん」
「対処するつもりはない――か。番場総監の御気持ちを汲むなら、『対処できない』と言うべきだが……君にとっては、同じだろうな」
「……すまない」
サダトの言及に、番場総監も深く頭を下げる。
本来、何の義務もないはずの彼に戦いを押し付けた上、あまつさえ一部の世論に「改造人間の人権を脅かす大量殺人犯」というレッテルまで貼らせてしまった負い目から、番場総監はその地位に見合わぬほどに威厳を損なっていた。
「政府の圧力がある以上、警察も直接事件に介入することはできない。――が、別件をカモフラージュに間接的なサポートに徹することは可能だ」
「というと?」
「稲城市近辺のパトロールと称して、現在捜査一課を山道近くの麓を中心に展開させている。名目上は単なる巡回だから、政府も口は挟まない」
「……」
「……仮に、政府の圧力がなかったとしても警察や自衛隊の装備ではあの重戦車は止められない。一番可能性の高い君に頼らざるを得ないことには違いないだろう。それでも、奴を見つけるための『目と耳』にはなれる」
憔悴した番場総監の姿を横目で見やりながら、サダトはロビンの話を聞き物思いに耽る。
政府が改造被験者を見殺しにするつもりであること。警察もそれに逆らえないこと。――アウラ
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