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仮面ライダーAP
第三章 エリュシオンの織姫
第6話 過ち
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かない)

 ハッチを開け、車上から曇り空を仰ぐ羽柴柳司郎は、己の68年に渡る人生を振り返るように、感慨深げに目を細める。若き日に生身を捨てて以来数十年、改造人間の傭兵(サイボーグ・マーセナリー)として世界各地を転戦してきた彼の躰は、錆び付いた機械のように軋んでいた。

(あの小僧の意識が戻るタイミングは予想より少々早かったが……まぁ、いい。おかげで奴も、「新しい体」を慣らす時間を稼げただろう)

 やがて彼は、視線を正面に戻す。見渡す限り、木枯らしが吹き荒れる林ばかりだが――この道無き道を突き抜けた先に、最後の標的が待っていることを羽柴は知っている。
 風田改造被験者保護施設。その最終目標を。

(あの施設を破壊し、被験者共を皆殺しにすれば、俺の役目もようやく終わる。地獄の底で、清山も待っているだろう)

 ――捜査一課を含む警察の厳戒態勢は、羽柴も察知していた。日本政府の圧力に屈することなく、別件のふりをして網を張り巡らせる、この対応。
 羽柴は、かつての後輩が決めた覚悟の強さを、改めて実感していた。

(番場。腰抜けだったお前も、ようやく一端になったらしいな。……だが、残念ながら無駄なことだ。いくら策を弄したところで、警察の力では改造人間は止められんよ)

 だが、いかに手を尽くそうと警察の対応力では改造人間を止めることは出来ない。ましてや相手は、シェード最古参の古強者なのだ。
 仮に政府の圧力がなかったとしても、施設の命運は変わらなかっただろう。

(じきに俺も奴に消されるだろうが、それは施設を潰した後だ。奴も俺を捜し出す前に、俺はやるべきことを――!?)

 ――だが。羽柴が想定していたのは、そこまでだった。

 仮面ライダーと警察が共同戦線を張っているとまでは、気づかなかったのである。

「まさか、な……!」

 不敵な笑みを浮かべて、イレギュラーの出現を出迎えた羽柴の視線の先には――アメノカガミノフネに乗り、羽柴と相対する南雲サダトの姿があった。
 さらにその頭上では一機のヘリが上空を舞い、林の中に猛風を巻き起こしている。その中から鋭い眼差しで――ロビン・アーヴィングが、重戦車を射抜いていた。

 警察は上空から発見した情報を、ダイレクトにサダトへ伝えていたのである。

「……警察と組んでいたとはな。予想以上の回復力といい、つくづく計画を乱してくれる小僧だ」
「……貴様は、もう独りだ。俺も似たようなものだけど……少し、違う」
「そうかも知れんな。して、その違いを如何に証明する?」
「――決まっているだろう」

 サダトは、手にしたワインボトルをベルトに装填する。ボトルのラベルには、「比叡(ひえい)」としたためられていた。

『SHERRY!? COCKTAIL!
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