第三章 エリュシオンの織姫
第6話 過ち
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の力を巡る醜い争いで、彼女の救済が水泡に帰していたこと。
何もかもが不条理で、救い難い話ばかり。自分を治すことを最後に、治療を切り上げて星に帰るというアウラの意向にも、反論できない程の有様。
そんな絶望的な状況ではあるが――それでもまだ、抗う人間は確かにいる。
世の不条理に立ち向かい、戦っている人間が。
(……それなら、俺は)
やがて彼はソファから立ち上がると、不安げなアウラの貌を見遣る。
地球人への愛情ゆえ、その救済のために己の秘術を行使した彼女に待ち受けていた、俗物達の妄執。全ての献身を台無しにする、その行いに傷つきながら、それでもここまで来た彼女の胸中は、察するに余りある。
元々自分は、彼女を守るために仮面ライダーの道を選んだ。なら、やるべきことは一つ。
「……わかりました。索敵はあなた達にお任せします。奴は……必ず、俺が倒してみせる」
「サダト様……!?」
その宣言に、ロビンと番場総監は揃って息を吐き出し胸を撫で下ろす。彼が戦意を喪失した場合、確実に次のテロで大量の死者が出るのだから当然なのだが。
一方で、アウラはこれほどの無情さを突き付けられてなおも戦おうとする彼の姿勢に、驚愕を隠せないでいた。
地球人を救う救世主気取りで災厄を撒き散らした自分のために、彼自身までもが化物扱いされているというのに。自分達の「正義」を、どこまでも「世界」に否定され尽くしたというのに。
――その眼は、まだ死んでいなかったのだ。
「……アウラ」
「……は、はい」
「今まで、君一人に辛いものを背負わせてきて、済まなかった。これは俺自身で決めたことだったけど、それでも君には辛かったんだと思う」
「……」
「本当なら、ここで今すぐにでも終わりにするべきなんだと思うよ。だけど今はまだ、待っていて欲しい。人間に戻る前に、俺にはやらなくちゃいけないことがある」
勇ましくも、どこか儚い。そんな横顔を見つめるアウラは、不安げに瞳を揺らして袖を握り締めた。
「でも……でも! 私、正しくなかったんです! 私は人々のためにと、信じてここまで来たけれど……全て間違いだった! 過ちだった! あなたが仮面ライダーになってしまったのも、『過ち』なんです! そんな過ちのために、あなたがこれ以上傷つくなんておかしいっ!」
その手を離さず、アウラは嗚咽と共に訴える。
自分の行いが過ちだと認めれば、そんな自分を支えるために剣を取ったサダトさえ「過ち」だったということにしてしまう。
だが、それでも「過ち」のために愛する人を喪うようなことだけは、避けねばならない。それが、アウラの胸中に渦巻く焦燥となっていた。
「……アウラ。確かに俺達は、間違っていたのかも知れない。人を守るために戦う
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