第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
最終話 別れと幕開け
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
――194X年8月31日。
鎮守府波止場。
蒼く澄み渡る夏空の下。南雲サダトの「船出」を祝うこの場には、作戦に参加した全艦隊が集まっていた。その筆頭として、サダトの眼前に立つ長門は澄んだ面持ちで彼と向かい合っている。
「短い間でしたが、お世話になりました。……おかげさまで、向こうの世界にも帰れます」
「我々もいい経験を積ませて貰った。深海棲艦ではない未知数の敵との遭遇戦――という経験の有無は、今後の戦術に大きく響くだろう」
桟橋に立つサダトの傍らには、新造されたアメノカガミノフネ2号機が進水している。ボディが修復不可能に至るまで損傷していても、エンジン部の原子炉プルトニウムだけは無事だったのだ。
一夜漬けで新たに二台目を建造した夕張は今、この場には来ていない。今頃は工廠で爆睡している頃だろう。
「夕張さんと、九五式の金型を下さったあきつ丸さんにも、よろしくお願いします」
「ああ、大層感謝していたと伝えておく。……急がねば、次元の裂け目がなくなるぞ」
「はい……では、御元気で」
「……達者でな。海の果てから、武運を祈っている」
長門に促されるまま、サダトは新たな相棒に乗り込んで行く。
――昨日の作戦で水平線の彼方に刻まれた次元の裂け目は、時間を追うごとに小さくなっていた。
もたもたしていては裂け目が閉じ、サダトは元の世界に帰れなくなる。
急がねばならない。彼の居場所は、少なくともここではないのだから。
「……」
「比叡、いいんデスカ?」
「……はい。これ以上は……辛い、ですから」
「そう、デスカ……」
長門の後ろで、サダトを見送っている艦隊。その群衆の中で、比叡はどこかものさみしい面持ちで彼の背を見つめていた。
金剛の問い掛けにも、目を合わせて答えず。彼女は胸元で襟を握り締め、ただ静かにサダトの船出を見守っている。
――仮面ライダーアグレッサーは滅びた。だが、向こうの世界を脅かしているシェードが完全に滅びたわけではない。
仮面ライダーGという先輩もいるらしいが、サダトは彼一人に戦いを押し付けられるような利口な男でもない。
何より向こうの世界には、彼が仮面ライダーになってでも守ろうとしている人がいる。比叡が割って入る余地など、もとよりなかったのだ。
(……これでいいの。これで)
赤城や加賀、駆逐艦四人組、妙高型姉妹、瑞鶴。彼と共に戦った仲間達が、歓声と共に手を振る中。比叡は自分の気持ちに蓋をするため、懸命に襟を握っている。
――その手が、震えた時。
ふと、サダトが振り返った。
「……ありがとう!」
彼の口から放たれた、その一言。それはきっと、艦娘達全員に向けられたものなのだろう。
だが、眼差しは。優しげ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ