第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
最終話 別れと幕開け
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しかし、それでも彼女は勇気を振り絞り、数回のノックを経て執務室のドアを開く。
そして。
手荷物を隣に置き、精一杯の勇ましい表情を浮かべて。艦娘として生を受け、この世界で生きてきた自分の名を語るのだった。
「初めまして、司令官! 吹雪です! よろしくお願いしますっ!」
艦娘として戦場に立つ者に相応しい、整然とした敬礼とともに。
――斯くして。
この世界における、仮面ライダーAP――南雲サダトの物語は終わりを告げ。
特型駆逐艦「吹雪」の物語が、新たに幕を開けるのだった。
これは彼女の数奇な運命と。友情と。戦いの日々を大海原に描く、真の英雄譚である。
◆
――2016年9月10日。
東京都奥多磨町某所。
先月に発生した謎の怪物による大量殺戮。その現場検証と復興のため、警察や自衛隊、報道機関の関係者達が大勢集まっている。
深夜になっても、彼らはこの世の地獄と化した街に居座り、絶え間無く行き交っていた。例え件の怪物が何者かに倒されたとしても、彼らの戦いは終わらない。
「ほら、こっちこっち! ――ちゃん、早く早く!」
「あんっ、待ってったら! ……やだもう、髪が傷んじゃう」
そんな中。生き延びた住民達は、痛ましい惨劇を目の当たりにして――それでも挫けることなく、前を向いて生きようとしていた。生き残った二人の少女が、溌剌とした面持ちで炊き出しの列に並ぼうとしている様子が伺える。
炊き出しに参加している人も。並ぶ人も。喪うばかりではいられないと、前へ進んで生きていた。
アグレッサーの暴威を以てしても、彼らの気力を削ぎ落とすことは出来なかったのだ。
――その景色を、闇夜に包まれた林の中で。二人の男が見つめている。
「アグレッサーの生体反応が消えた。……お前の後輩に、討たれたようだな」
「……」
「所詮は量産型の一人。そう侮っていた、我々の落ち度だ。切り札を失った我がシェードに、もはや光明はない」
白髪のオールバックや、皺の寄った顔立ちから、かなりの高齢であることが伺える……が。その男の体は、漆黒のトレンチコートが張り詰めるほどの筋肉に包まれていた。
厚着でも隠し切れない肉体を持つその男は、懐に手を忍ばせると――小さなUSBメモリを取り出し、隣に立つ青年に手渡す。
白いジャケットを羽織るその青年はメモリを受け取ると、暫しそれを神妙な面持ちで見つめていた。
「これが……例の?」
「そうだ。清山の行き先は、それに記されている。どうするかは、お前の好きにしろ」
アグレッサーの暴走により、東京は半壊。その混乱に乗じ、牢の中に囚われていたシェード創始者・徳川清山が脱獄していた事実が数日前に発覚している。
警察は清山
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