第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第19話 生きるべき世界
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り果てたプロテクターが、海に落ち水飛沫を舞い上げた時には――すでにアグレッサーの体は、骨と皮だけに枯れ果てていた。
次元破断砲の放射で蓄積していたエネルギーを出し尽くし、第1形態まで退化しようとしているのだ。
――そして。この無防備な状態こそ、スクナヒコナ作戦の真の狙いなのである。
第3形態から第1形態に退化する、途中経過。枯れ果てた木のような、醜い今の姿こそが――待ち望んでいた絶好の的。
第3形態でも第1形態でもない、その中間にある「第0形態」。数分に満たないこの形態になっている今こそ、アグレッサーに致命傷を与え得る千載一遇の機会なのだ。
この一斉砲火で、全てを終わらせる。誰もがその決意を固め、砲身を巨大な仇敵に向けていた。
『……我々が勝ち取るこの勝利を、南雲サダトに捧げる! 全艦、砲撃開始ッ!』
そして。
異世界から来訪した歪な侵略者に、鉄槌を下すべく長門は全ての艦娘に砲撃を命じる。
――だが。
「……ッ!?」
次の瞬間に訪れたのは、全艦隊から放たれる裁きの業火――では、なかった。
『トウサン……トウ、サン……』
枯れ果て、力尽き、何もできないはずのアグレッサー第0形態。
「……なッ!?」
「そんな……!」
その骨格が浮き出た禍々しい大顎から、蒼い霧が溢れたのだ。
「まだエネルギーが尽きてないの!?」
「イタチの最後っ屁、という奴デスカ……! 往生際の悪いッ!」
『……不味いぞ! 全艦砲撃中止! 退避だ! 全速後退急げッ!』
次元破断砲は撃ち尽くしたはず。
現に今のアグレッサーから滲んでいる光は、先程の放射に比べてあまりにも弱々しい。例えるなら、山火事とマッチの火。
だが、如何に出力が弱っていようと「次元破断砲」には違いない。
全力放射なら次元を切り裂く程の破壊力。それが弱っているからと言って、自分達を壊滅させるには至らない威力で済む保証などない。
艦娘達が強気に攻め入れたのは、アグレッサー第3形態の唯一にして最大の攻撃手段を「確実に外す」算段があったからこそ。それを欠いた今、不確定要素で満ちている第0形態の放射を浴びる訳にはいかない。
一目散に、逃げるしかないのだ。
だが――第0形態の、放射の方が……速い。
「くッ……! 間に合わない!」
「急いで! 少しでも遠くへッ!」
現場指揮官として連合艦隊を纏めていた赤城と加賀が、艦娘達へ懸命に呼び掛け続けている。その後ろでは、アグレッサーの大顎に蓄積された蒼い霧が、
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