第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第17話 核の手は借りない
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ああ。……『核の手は借りない』、だそうだ」
「核兵器をネコ呼ばわりなんて、思い切った御人ですね」
「全くな。――だからこそ、信じられる」
もし、提督が他の軍人達と変わらない凡百の男だったなら。
核兵器になりうる原子炉プルトニウムを接収し、上層部に引き渡していただろう。それをダシに、出世の道に踏み込もうとしていたに違いない。
一度、核兵器というものを軍が兵器として使ってしまえば。その絶対的な威力に取り憑かれた者達が、確実に正道を踏み外す。
人を悪魔にしないために。提督は、核の力を知った上で、その力を兵器として使わない決断を下したのだ。
「……だが、その代わり。原子炉プルトニウムには破壊兵器ではなく、大和型の重量を持つこの『大飯食らい』を転がす動力源として、大いに働いてもらう」
「ですね。いくら飛ばしてもバテない大和型……って思うと、それだけでも破格の性能ですけど」
「だから上層部がこれに感づく前に、この件を片付ける必要がある。提督が作って下さった時間と作戦、決して無駄にはしない」
アメノカガミノフネから手を離した長門は、決意を新たにするかのように、勇ましく拳を握りしめた。
そんな彼女はふと、設計図や工具で散らかった夕張の机の上に、一本のワインボトルが置かれていることに気づいた。
「……む? あれは南雲殿のワインボトルか。どうしてここに……」
「ああ、違いますよ長門秘書艦。あれ、私の作品です」
「夕張の?」
サダトが変身の際にベルトに装填している、小さなワインボトル。それとよく似た「夕張の作品」には、「比叡」と達筆でしたためたラベルが貼られていた。
それを手に取り、小首をかしげる長門。そんな上官の姿を、夕張は悪戯っぽい笑みを浮かべて見守っている。
「『比叡』と書かれているようだが……彼女と何か関係があるのか?」
「えぇ、勿論。これを使えば、作戦成功率はさらに高まります。飛び道具を持っていない南雲君には、たまらない一品ですよ」
「……?」
◆
――194X年8月28日。
鎮守府波止場。
「……やっぱり、ここにいた」
「あ、比叡さん」
月灯りに彩られた夜の海。その水平線を見つめるサダトの背後に、今となっては聞き慣れた声が掛けられる。
静けさに包まれた波止場で、一際響く彼女の囁き。その声に振り返った先では、月光を色白の肌に浴びる絶世の美少女が微笑んでいた。
「南雲君がふらっと出掛けたって聞いてね。もしかしてって思って来てみたら、案の定」
「あはは……どうも、寝付けなくてさ」
「無理ないよ。私も、結構緊張してる」
「その、今日はありがとう。作戦会議の時、勇気付けてくれてさ」
比叡から見ても、月を見上げるサダトの横顔は輝い
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