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仮面ライダーAP
第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第16話 アグレッサーの真実
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「……!?」

 その内容に、資料に目を通していたサダトが思わず顔を上げる。他の艦娘達も同様に、驚愕の表情を浮かべていた。
 だが、そんな反応は想定内だったのだろう。長門は気にした様子もなく、淡々と説明を続ける。

「この世界の1971年。彼が住んでいた某県では当時、自然破壊を顧みない工業開発の影響で河川が汚染され、住民の肉体に深刻な疫病を齎していたらしい」
「……!」
「その影響で割戸神博士は、一人息子の汰郎(たろう)君を喪った。以来彼は、汰郎君の遺体をホルマリン漬けにして、45年以上に渡り保存し続けていたの。いつか科学技術が人を蘇らせるほどに発達した時に、最愛の息子を生き返らせるため……」
「ホルマリン漬け……!」
「そう。そして、老いから自身の限界を感じた彼は、息子を改造人間として蘇生させることに決めた。完全な人間ではないけれど、それでも生き返りさえすればいい……と」
「そして彼は、息子に次元を超える力を持たせることで、息子を『綺麗な水』に溢れた世界へ導こうとしていた。体を犯すような汚水などない、綺麗な世界へ。……尤も、その結果が今の暴走なのだがな。シェードの科学者達でも、アグレッサーの狂気を御することは出来なかったらしい」
「……」

 長門と陸奥の口から語られた、割戸神博士の過去。
 シェードに身を寄せ、死んだ息子を改造人間にしてまで生き返らせようとしていた理由を知り、サダトは目を伏せ記憶の糸を辿る。

 あの時目にした、公害の写真。あれが撮影されていた時代と、長門が口にした年代は一致していた。さらに、サダトが読んでいた割戸神博士の著者には――気に掛かる記述があった。

 ――『この国には、この世界には偽善と欺瞞が溢れている。平和を謳いながらマイノリティを公然と迫害し、誰もそれを咎めない。この世界に生を受けていながら、この世界に居場所を見出すことができない。それを是とするならば、我々はもはや他の世界に居場所を求める他はないのかも知れない』。

(割戸神博士……あなたは、そのためにこんな……)

 「マイノリティ」とは割戸神博士とその息子を含む、当時の某県の住民達だろう。あの当時、被害者達は果敢に工場経営者に立ち向かっていたが、訴えが受け入れられるまでは何度も握り潰されてきた歴史がある。
 その歴史の中で息子を喪い、当時の大多数――マジョリティがそれを「肯定」した結果。彼は自分が住む世界に絶望し、次元を隔てた向こうの世界に望みを懸けたのだ。

 そうして彼はシェードに与して次元破断砲を開発し、息子を改造人間として蘇らせた。全ては、息子を外の世界へと連れ出すために。

(……じゃあ、あの時俺が砕いたのは……)

 アグレッサーと最初に戦った時。サダトは無我夢中で放ったスワリング・ライダー
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